[コメント] 密偵(2016/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
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どこまでエンタメだろうか、ぐらいの気分で観に行った。序中盤はそのようなものだ。匿名性が高く、別に義烈団の話でなくてもよい。観ている最中は、サスペンスとして観るのなら以下の2点が瑕疵と感じられた。ひとつは、三船クラスの英雄であるソン・ガンホが日本側につくはずがないと判ってしまうこと。ふたつは、朝鮮総督府爆破計画は、史実として成功したことがないのだから、映画でも成功しないと判ってしまうこと。
そういうエンタメ調はガンホが客車から飛び降りた処で終わる。彼はどこへともなく去ってゆくのだろう。と思っていたら何と出勤する。そしてここからリアルになる。我々は対独レジスタンスのフランス映画で何度も観てきた訳だ。これって日本もドイツ側なんだよな、と考えながら。映画はその形式を踏襲している。しかし、具体的に焼き鏝渡すのが白髪頭になった『翔んだカップル』の勇介君だと衝撃度が違う。
裁判でのガンホのぎりぎりのダブル・ミーニングは聞いていて苦しかった。私などこういう苦しさを無視して日本人でいることはできないと思うが、少しは空気が読めるのでそういう人は少数派だと知っている。よく公開したものだ。史実を扱うと本邦公開はもっとハードルが上がるのだろう。こういう自国批判の映画を公開する尺度は即ち「民度」の高さのバロメーターであるはずだろうに。
映画は多少のカタルシスというエンタメ調に戻って終わる。あのボレロの通俗はなかろう。ジャッキー・チェンの新作同様で、エンタメ調で粉飾されているから日本で観れたのだろう、と思わざるを得なかった。
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