[コメント] RAW〜少女のめざめ〜(2016/仏=ベルギー)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
欧米映画のカニバリズム嗜好、それは供犠の昔への先祖返りという側面があるだろう。キリスト教だって子羊の血が、などと唄い踊るカーニバルの世界と不即不離だ。新嘗祭で奉納するのは米だったりするお茶漬けサラサラの日本人には異世界である(映画館は満員だったのでそんな時代じゃないのかも知れないが)。本作、評価高そうなので、その辺の背景についての鋭い批評などあるんじゃないか、という興味で観たのだったが全然違った。
本作はスプラッター映画にシニカルなギャグを塗したことで評価される作品なのだろう。エラ・ルンプフの裸を見て黒い鼻血を垂らすガランス・マリリエール。噛みつきならがまぐわる彼とのセックス。気絶する姉のラバ・ナイト・ウフェラの指を喰っちゃう件なども暗い笑いがあるし、家系の遺伝だというオチのラストも可笑しみがある。満員の観客のうちの数名が引き攣ったように笑っていた。
だからマニア向けによくできてはいるんだろうけど、他方、ジャンル内でこじんまり纏まっちゃっており、ジャンルの前提である、なんでこういう一家がいるのだ、という切り口は不問に付されている。マニアにはそんなこと蛇足に過ぎないだろう、というのは判る。しかし私としては、閉鎖的で開かれていないというマニア以外の感想が出てくるばかり。アニメたくさん観ていないと判らないアニメ、と同じようなものだった。例えば『ゾンビ』の面白さは、ジャンルなど関係がなかった(吸血鬼のパロディ映画などとは類が違うと思う。この一家、吸血鬼ほど有名じゃないし)。
作劇は全編盛り上げるのには成功してはいるが、前半それを担うのは無茶な学生寮であり、後半は姉妹の相克、学生寮は後半置いてきぼりになって、結局何だったんだ、ああいう学校って獣医学部は普通なのか、という頓珍漢な感想が出てくるのはおかしいと思う。 冒頭ほかの並木道と車はヌーヴェルヴァーグっぽさがあり、悪く云えば模倣に過ぎないが、事故シーンなどどれもよく撮れている。出来は悪くないんだろう。★2つは二度と観ない印。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。