[コメント] 春の夢(1960/日)
オールスターお正月バラエティ映画で階級対立を描いちゃうもの凄さ
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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小沢栄太郎のブルジョア親爺は安定の面白さ。実存主義を経て日の丸掲げ赤旗に参加するに至る半ズボンの川津祐介はもの凄く、今も通用するような戯画。しかし一方で織田政雄や賀原夏子の狡さを詳述する辺りで、昔の娯楽作にありがちな長屋賛歌が否定されていて、財布を隠しちゃう笠智衆が印象に残る。
ほとんど舞台劇のなかキャメラが外に出るのは労働争議の件だけ。喧嘩両成敗のなかこれだけは肯定されており、人海戦術でやたら迫力がある。この切り口は木下のものだが時代のものでもあるだろう。
こういうのを見ると、松竹ヌーヴェルヴァーグの騒動って何だったのか、トピックだけでは判らない部分が見えてくる処がある。大島は木下の『女の園』観て監督を志したのだし、『日本の夜と霧』(60)だって(脚本を会社に読ませなかったらしいけど)企画自体は通っている。独立して大企業だった映画会社が報道に似たスタンスを持っていた時代だと感じられる(労働運動と新左翼運動では乖離はあるだろうけど)。
物語は東山千栄子のロマンスで締める手際が良好。笠の老け役造形は常ならぬ弱々しさでハッとさせられる。佐野周二と久我美子の突然のロマンスも感じいい。いいギャグも多く、毛生え薬の効果がない専務の十朱久雄たちが傑作。娘の十朱幸代は現在に至るまで芸風が見事に変わらないものだ。
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