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[コメント] フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法(2017/米)

主人公たちの住処は薄紫色の壁のモーテル。隣のモーテルはドアが緑色。これは例だが、全体に建物あるいは空間が、把握しやすいように上手く考えられている。基本的に大きく開かれたロケーションを背景としているので、広角ロングショットが良く合う。
ゑぎ

 美しい空。夕焼けをバックにした歩く人物の仰角ショット。序盤の停電のシーンで、モーテルを引いて撮って、各部屋から、客たちがドアを開けて出て来る様子を見せるショットも可笑しい。このような建物と人物を、まるで、蟻の巣の断面観察キットのように見せる画面がいくつかある。私は、タチみたい、と思いながら見た。

 また、いつもヘリコプターが飛んでいる、画面隅に映っているか、オフ(画面外)で、ヘリの音がしている、というのも、安穏の中にも不穏なムードを醸成する。あるいは、画面で提示されないが、すぐ近くに、多分、沼地があり、ワニがいたりするのだろう(これは科白で示唆される)。南部特有の樹木や草原の画面も不穏なのだ。さらに、本作の編集は、カット尻が短いのが特徴的だ。これにより、キビキビしたリズムを形成するが、同時に性急な感覚、云い過ぎかも知れないが、生き急いでいるような焦燥感も生まれて来る。終盤の畳み掛けとエンディングの簡潔な暗転も、本作の編集の特徴が活きていると思う。

 役者では、やはり、モーテル管理人−ウィレム・デフォーの一貫した優しいキャクター造型が秀逸だと思う。子供たちへの眼差しもそうだが、敷地に入り込んだ三羽の鶴を、話しかけながら外へ追いやるシーンなんかも優しさが滲み出ている。また、『ニトラム/NITRAM』のケイレブ・ランドリー・ジョーンズが、デフォーの荷物運びを手伝う場面が2回あるが(バイトだと云う)、この2人の関係はカットされたシーンがあるように思える。ランドリー・ジョーンズが中途半端な扱いなのが残念。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)jollyjoker[*]

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