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[コメント] ディシジョン・アット・サンダウン(1957/米)

バッド・ベティカーランドルフ・スコットのミニマルだがよく引き締まった西部劇。タイトルの「サンダウン」は町の名前だ。全編、夕景及び夜の場面は無し。ある一日の早朝から午後のまだ太陽が出ている時間帯までの約半日のお話。
ゑぎ

 このタイトルからしてそうなのだが、小さなツイストが沢山ある映画だ。冒頭は、山の稜線を駅馬車が行くのを小さく捉えた、とてもフォトジェニックな大ロングショット。馬車の乗客の一人、スコットが御者に銃を向けて急停止させる。すると、林の向こうから、相棒のノア・ビアリーJr.が姿を現し、スコット用の馬を曳いて駈歩(かけあし)でやってくる。当然ながら、スコットらが駅馬車強盗を働くと思ってしまうが、実は馬車とは別行動に入る、というだけの場面で(多分、銃を向けないと止められなかったのだろう)、これもツイストの一つ。ちなみに、ビアリーは「昨夜から何も食べていない」と愚痴り、「町に着いてから食べよう」とスコットは受け、サンダウンの町には昼前に着くので、この冒頭は朝のシーンだと思う。

 サンダウンの町は教会の塔のショットから。鐘が鳴る。「日曜日か?」「いや木曜日だ。今日はテートの結婚式だ」といった会話があり、テートという人物を追って、この町に来たことが段々と分かってくる。スコットは「まずは床屋だ」と云ってビアリーの食事はおあずけになり、床屋の後はすぐに結婚式に参列する。そこで、スコットは新郎のテート−ジョン・キャロルに銃を向け、メアリーの仇だ、と皆の前で云い、新婦ルーシー−カレン・スティールへは「今日中に未亡人になるのでこんなヤツと結婚しない方がいい」と云う。こゝでも、すぐにテートを撃ち殺すのかと思っていると、スコットはビアリーと共に、町の厩舎に併設された納屋に立てこもるという予想外の展開になって、以降ラストまで、ほゞ納屋の中から出てこないのだ。

 本作は、スコット以外の配役にビッグネームが一人もいないのが少々寂しいところだが、敵役としてテート−ジョン・キャロル以外に彼の子分のような保安官−アンドリュー・ダガンがいて、この2人とのガンファイトが逐次行われるのは、アクションシーンの見どころだ。最初に保安官と決闘する場面では、スコットは右利きのホルスター、ラスト近くにテートと対決する際は、右手を怪我しており、左利き用のホルスターを付けている。また、テートには新婦ルーシーとは別に愛人がおり、これをヴァレリー・フレンチがやっている。この人はデルマー・デイヴィスの傑作『去り行く男』の悪女役(アーネスト・ボーグナインの妻の役)が忘れがたいが、本作もいい。『ガーメント・ジャングル』のリー・J・コッブの恋人役では、老けたオードリー・ヘップバーンみたいと思ったが、本作の彼女は、アン・バクスターのようと思いながら見た。

 あと、中盤以降の舞台装置は、ほとんど納屋とホテル(サンダウン・ホテル)とルーシーの家の3つだけになるのだが、それぞれに内装の美術は丁寧な仕上がりだ。また、最初は酷い悪役かと思わせたテートが、終盤はそれほどでもない、というか少しカッコよく描かれる転換があったり、結局スコットには、ある意味非常に厳しい結末が待っている、といった部分でも、予想が覆される。あるいは本作のビアリーは、私が今まで見てきた彼の中で、最も良い役であることも特記したい。果たして、ビアリーは空腹を満たすことができたのか。それは伏せておく。

#備忘でその他の配役などを記述します。

・町の有力者には医者のジョン・アーチャー、新婦の父親にジョン・リテル

・牧場主モーリーはレイ・ティール。床屋のヴォーン・テイラーも目立つ。

・ホテルのバーのバーテンダー−ジェームズ・ウェスターフィールドもいい。

(評価:★3)

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