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[コメント] 十戒(1956/米)

これを14インチのテレビで観てしまったことを、未だに悔やんでます…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ハリウッド大作にはキリスト教を扱ったものが多いが、その中でも双璧をなすものは本作と『ベン・ハー』(1959)だろう。そのどちらも入念な時間と多くのエキストラ、当時最先端の特撮技術によって作られているスペクタクル作品に仕上がっている。聖書を題材にすると売れると言う頭があるのか、製作者も財布のひもがゆるむのかも知れないし、1957年の全米興行成績堂々の1位と言う記録がなによりそれを証明してるだろう。

 未見ながら、本作はそもそもデミル監督が1923年に監督した『十誡』の自家版リメイク作品で(ただしこちらは古代編と現代編の2部構成)、本作を作る上で監督自身もそうとう気負っていたらしく、企画と考証研究に3年、現地エジプトのロケハンと脚本執筆に3年、撮影にかかるまでの準備に3年、撮影が始まってからのロケに3ヶ月、セット撮影に4ヶ月と、合計9年7ヶ月を用いたそうだ。製作側もそうとうやきもきしたことだろう。

 そもそも聖書のこの出エジプトの話というのは非常にドラマチックに、そしてスペクタクル性に溢れているため映画の素材としてはもってこいなのだが、歴史を題材とした大作は時代考証からロケ、そして衣装や装置、特撮ととにかく金がかかる。映画会社としてもこの手の作品を作るのは会社の浮沈をかけて行うのが普通で、そうそう観られるものじゃない(出エジプトを題材としたものはデミル監督のこの2作と、アニメの『プリンス・オブ・エジプト』(1998)くらいではないか?)。しかもそれが当たるかどうかは時の運も多く作用する。それらが上手くかみ合った時、初めて成功と言える。本作が出来たのは半ば奇跡的なかみ合いが起こったからとも言える。

 本作の圧巻は海を割るシーンだが、画面構成の見事さにヘストンの仰々しさがぴたりと決まり、まさしくこれこそスペクタクル。アカデミー特殊効果賞は当然とも言える出来だ。ここはテレビの小さな画面には勿体なすぎ。これは絶対劇場で観るべき作品だ。あの圧倒的な水の演出はまさに映画のために作られたもの。今はSFXを用い(最近ではむしろVFXという名称の方が一般的か?)演出できるんだろうけど、生の迫力がこっちにはあるし、その手間とタイミングが見事だから良し。

 本作でブレイクした観のあるチャールトン=ヘストンのモーセ役ははまり役。以降歴史スペクタクル作品には当然の如く登場するようになる(笑)。あとこれまたファラオ王にははまり役のユル=ブリンナー。この人、本当にアメリカ人以外の役が多いなあ(笑)

 ところで神の声を吹き替えたのはデミル自身だと言われているが、自分が声を当てたと主張する人もいるらしい。今だったら声紋で分かりそうなもんだが、それをやってないのか、あるいは本当に複数の人間の声をごっちゃまぜにしてしまったのかも知れないな。

(評価:★4)

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