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[コメント] クワイエット・プレイス(2018/米)

「音をたてたら負け」というレクリエーションゲームのアイデアでサスペンスを撮ってみましたという作品。映画館で固唾をのんで観るのが最上の鑑賞法。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「下に落ちたら負け」と遊具の上で追いかけっこをする『トレマーズ』を思い出す。設定のルールが誰もが幼少期に体験したような分かり易いプリミティブな感覚に根差しているので、そこをくすぐられるハラハラ具合がとても心地よい。なるほどね〜、という感じ。特に映画館という基本的に静まり返っている空間で、出し抜けに音が鳴り響く瞬間にビクビクしながら観れば効果マシマシだろう。家などで生活音に囲まれて観てしまうのはもったいなかったなぁと思った。

野球で「ベースに接して入れば安全圏」という、たかがそれだけのことでも、その取り決めに添うことでクロスプレーが生まれ、大人があれだけ興奮できるのだから、ゲームっていう仕組みは侮れない。で、そのゲームを面白くする一番大事なことは、とにかく「ルールに添う」ということだ。指先が少しでも触れていればセーフ、という、誰にとってもその公正明白なルールこそがスリルを生むのだ。基準が曖昧だったり、誤審が多いゲームは白けてしまう。

この作品がいまいちなのは、「音をたてたら負け」というルールにおいて、制作側と鑑賞側にわりと初手から齟齬があることだと思う。つまりどのくらいの音がアウトでセーフなのか、生活音はどこまで許されるのか、川や滝のような常時音がするものではなく、強風が家屋などに当たる衝突音はどうなのか、人間以外の動物たちの鳴き声に反応するのか、など、序盤でそのルールが明らかにされていれば、観客は今起きた状況が「ヤバイヤバイよ」なのか「あっぶね〜」なのかわかり、それでハラハラできるのに、そこが非常に制作側が説明不足というか、自己都合なのである。

最大のサスペンスであるエイリアンのいる場所での出産というSF史上でもなかなか珍しい場面の構築も、赤ん坊が産声をあげるのはアウトなのかセーフなのか、わからないとハラハラしようがない。そもそもこの状況で赤ん坊を産む→やがて夜泣き(夜だけじゃないけど)するのは、一家としてリスクなのかリスクじゃないのか、そればかり考えてしまってハラハラどころじゃなかった。もっと言えばその前段階としてセックスする時も喘ぎ声をガマンしたのかなあ、とか余計なところまで連想がとんでしまった。こうなると「音をたてたら負けね!」っていう遊びの最中に我にかえってしまうようなもので、「なんで子どもの時はそんなことが面白かったんだろうね〜」というふうになってしまうのだ。

それに階段の釘は、絶対に音をたててはいけないんであれば、うっかり踏み抜いて悲鳴をあげたり、引っかかったりして躓いて転ぶもとになるのだから絶対にひっこぬいているはず。ご都合主義を通り越していくらなんでもあれは無い。

弟の死に対して自分を責め、その贖罪を果たしたいと思い、父に反発する姉のドラマはとても良かった。美少女タイプでない感じも、終盤の父との和解や、最後母と戦闘モードに入った時の場面にすごく合っててナイスキャスティングと思った。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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