[コメント] 母のおもかげ(1959/日)
これが清水宏の遺作か!いやあ、演出力の格の違いを見せつけられた気がした。
道夫が淡島千景の服を相手に一人芝居するシーンもいいが、私はこゝは、ちょっと、あざとい感じがする(帰宅した淡島に、野球部に入るのはやめた、と云う展開はいいが)。やはり、エミ子が、鳩を逃したことを知った道夫の激昂とその後の淡島の恐慌シーンの演出は最強じゃないか。
また、ラスト近くの無言劇も凄い。水道の蛇口から水が一滴ずつ落ちる音が聞こえる中、屋内の一人一人に、ドリー前進移動で寄る。根上淳、淡島、見明凡太朗、村田知栄子。これもちょっとワザとらしいと思えなくもないが、しかし、テンションの上がる演出だ。
音の使い方で、もう一つ書いておくと、冒頭の、朝の豆腐屋の場面で、桶の中を板でかき回す村田、続いて、箒ばきをする娘の南沙斗子が描かれるが、こゝで既に、かなり意識的に音の演出をしている。シャカシャカ、サッササッサという繰り返しのリズム。
エンディングは私とて涙なしには見られなかったが、序盤に、根上が、淡島の子供−エミ子の寝顔を見るシーンも、私にはタマラナイ場面だ。根上は、子供って、可愛いってだけで、もう親孝行をしている、と云う。根上の心根の優しさがよく分かる。なので、淡島が根上とすぐに結婚を決めてしまうのも納得できるのだ。
さて、本遺作まで、清水宏映画の子役の扱いの見事さには感嘆することしきりだが、道夫役の子役も勿論素晴らしいが、私は、むしろ、小さなエミ子を指導した演出部の力量に驚嘆する。
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