[コメント] マルケータ・ラザロヴァー(1967/チェコ)
例えば、同一シーン内でのルック(主に露光)は統一する気がないんじゃないかと感じられるぐらい、暗かったり、明るかったりだし、雪が降っていたり、降ってなかったり、というシーンもある。
カメラワークは、時代の流行に抗わず、ズームを頻繁に使う。特に前半が酷い。ズームインとズームアウトを同一ショット内で行ったりする。数は少ないが、前進ドリーのショットもあるのだから、もうちょっと手間暇(お金も)かけて、移動ショットを選択できなかったのだろうか、いやフィクスでいいと思うショットもズームを使うのがこの時代だが、私は、流行に追従しているように感じてしまうのだ。ちなみに、全編で一回だけ、主人公マルケータに対してのドリー・ズーム(Vertigo)もある。このショットは鮮烈。
また、編集、シーンの繋ぎ方の特徴として、距離の感覚も描く気がないように感じられる。ある意味、距離の感覚がシュールと云うべきか。全編が1キロ圏内の話みたいに思えて来る。例えば、終盤、丘の上の修道院から、男の子と2人で外に出たマルケータが、すぐに、かなり離れた場所であろう、牢破りの現場近くへ現れるように感じられる、といったことだ。
上に書いたルックやカメラワーク、編集も含めて、まあ見る者によって好みが分かれるところかも知れない。いくつかある戦闘シーンはダイナミックな演出で、特に弓矢や槍を使った見せ方は見事なものだ。あるいは、前半の最後、マルケータと父親が修道院を訪れた後、ミコラーシュたちにマルケータを奪われる場面の迫力なんて特筆すべきだろう。瞠目するショットが散りばめられている。それに、主人公のマルケータがとても美しい女優だし、もう一人のヒロイン、アレクサンドラも含めて、二人にはヌードシーンもあり、セービス精神も旺盛なのだ。
プロット展開全般については、神話的ムードが上手く醸成されているし、性急な繋ぎも、パゾリーニみたいと云えばそうで、神話の造型に奏功していると云えるかも知れない。ただし、私はテクニカルな面、プロット展開含めて、良く出来たイタリア製西部劇みたい、と思いながら見た。声楽を中心とする荘厳な劇伴も、格調の高さを演出するが、反面、鳴りっぱなしが鬱陶しいと感じられた。
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