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[コメント] スパイダーマン:スパイダーバース(2018/米)

今のアニメーションの中で昔風のアニメーションキャラを使ったら、『ロジャー・ラビット』感が増した。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 背後にある設定はかなりごちゃごちゃしてるが、そんなことを考えるよりも、たくさんのスパイダーマンが登場するのを素直に楽しむべき作品だろう。

 マイルス以外で本作に登場するのは、アース616とはほんのちょっと性格が異なったためにヒーローとして失敗してしまったまま歳を食ってしまったピーター・B・パーカーのスパイダーマン。ピーターではなく恋人のグウェンが蜘蛛に噛まれて誕生したスパイダー・グウェン、フィルム・ノワールの世界観の中で活躍しているスパイダー・ノアール、未来の時間軸でSP//dr というパワードスーツを駆使するペニー・パーカー、コミック世界から現れた不死身のヒーロー、スパイダーハムという5人。

 基本的に物語に関わるのはピーター・B・パーカーとグウェンの二人がメインだが、そうやって絞ったのは正解。登場キャラが多い割に物語がとてもすっきりしてる。

 物語もかなり単純で、主人公を思春期の少年にして、揺れる心に悩みつつ、自らのアイデンティティを確立していくというオーソドックスなビルドゥングスロマンになってるが、この物語にはそれこそが重要。ぴったりはまった物語ともなってる。

 で、これは絶対に言わねばならないことだが、本作の演出は本当に見事。

 ヒーロー作品は元々大部分はアニメーションで作られていたが、それは演出面で実写では出来ない事を行えることからだった。現在でもテレビの方ではヒーローものはアニメの方が優位に立つが、映画に関しては既に実写でそれが出来るようになってしまった。それならばアニメーションの優位とはどこにあるのか?と考えてみると、爽快な演出面以外の部分となる。

 そこで本作の出した回答は、二次元アニメと三次元アニメの融合である。これはこれまでにも挑戦した作品は数多くあるが、その中で最も上手くはまったのが本作だろう。主人公モラレスを含め大部分のキャラは3Dで描かれるのだが、スパイダーハムとペニー・パーカーは2D風味。3Dの上に2Dが乗ってるのを無理矢理ではなく出来るだけ自然に作っていて、更にスパイダー・ノワールは完全なモノクロームキャラ。彼らを自然に映すためには相当細かい作業が必要になる。その努力に敬意を表したい。

(評価:★3)

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