[コメント] 偉大なるマッギンティ(1940/米)
ちなみに、中盤に主人公−ブライアン・ドンレヴィが秘書のミュリエル・アンゲルスと結婚を決める場面では、ドンレヴィが唐突にアンゲルスの脚を見る。これをご丁寧にティルトダウンして脚を映し視線を表現する演出もある。話を冒頭に戻すと、酒場のバーテンダーに身をやつしているドンレヴィが、やはり米国からワケありで流れてきた元銀行員の男−ルイス・ジーン・ヘイトと開巻の女性ダンサー−ステフィ・デュナの2人に「実は州知事だったことがある」と告白し回想するところからメインプロットとなる。
スタージェスらしい社会派的なスクリプト、あるいは、ビターな感覚と甘さが同時に味わえるプロット展開を誉める観客が多いだろうと思うが、そういった部分の指摘については、他の方にお任せするとして、私は画面造型の良いところをあげておきたいと思う。まず書きたいのは、暗い屋内に人物が入る場面の反復だ。3回ある。最初は結婚したドンレヴィとアンゲルスが新しいアパートに2人で入るシーン。次に市長になったドンレヴィがパーティで泥酔して帰宅し、暗い部屋で大きな音を立てながらテーブル(の上の食器)や椅子をひっくり返すシーン。そして、最後は、知事になったドンレヴィがあっという間に裏金問題で逮捕・留置された後の、面会から帰宅した妻のアンゲルスが暗い部屋に入る場面。この中では、最初の場面が実にいいと思う。ローキーの画面とマッチとロウソクの光。天井のシャンデリアにティルトアップする感覚も自由さが溢れる。2人がバルコニーに出ると、オフ(画面外)でマーチが聞こえ、ドンレヴィが、自分の市長選の行進だと云い、2人してパレードに参加する俯瞰ショットの造型がダイナミックだ。
あと、何度か非常に安定・カッチリした、肩なめというか、ほとんどツーショットと云っていい構図での切り返しの反復も実に決まっている。例えば、結婚後6か月何の交渉もなかった2人が初めてキスをするシーン。あるいは椅子に座って子供2人を抱きながら本の読み聞かせをする(子供たちは既に眠っている)ドンレヴィと妻のアンゲルスの会話シーンにおける、ツーショットどころか、子供たちを含めて4人を画面に入れた状態での切り返し演出も見事だと思った。その他、ボス−エイキム・タミロフとのバストショットの切り返し、不正選挙の実行役として登場し、その後、ドンレヴィを支援するウィリアム・デマレストの応援演説シーンにおける対立候補のそれとのクロスカッティング。留置場から逃亡する場面の影の演出など、画面の見どころも多いのだ。これらを見ても、スタージェスはスクリプトライターとしてよりも、ビジュアリストとして評価すべきじゃないだろうか。
#酒場のバンド演奏。冒頭近くでは「ルイーズ」、ラストシーンでは「つばめ」。
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