[コメント] タロウのバカ(2019/日)
因果が自覚できない心の痛みを、さらに上塗りするよううに無自覚に、自らの精神と他者の肉体への加虐へ向かう暴走スパイラル。説明(物語)を極力排除し、彼らの状況と行動だけで世の中にぽっかり開いた蟻地獄を表出させてゆく演出に、理屈ではい説得力があった。
冒頭で描かれる「相模原やまゆり園」殺傷事件の犠牲者を連想させる人たちと、エージ(菅田将暉)、タロウ(YOSHI)、スギオ(仲野太賀)の三人は、この社会のなかで“異質な他者”という共通の属性を持った表裏の存在なのだ。置かれた状況に対して言い訳はしないが、暴走する破壊衝動に謝罪もしない彼らの“未熟”さを、無条件に受け止めるほど“世の中”はタフではないだろう、という挑発。
近年、テイストの違う作品を起用にこなす大森立嗣監督だが、この荒削りな演出は長編デビュー作の『ゲルマニウムの夜』を彷彿とさせる。デビュー前の20代に書いたオリジナル脚本だそうだ。きっとこれが大森の本性なのだろう。
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