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[コメント] 特捜部Q カルテ番号64(2018/デンマーク=独)

水面のカット。シナトラが流れるオープニング。水と液体は本作でもキーとなる道具立てだ。冒頭は1961年。浜辺での男女の逢引きシーンで始まる。ヒロインのニーデは、天地逆さまのカットで走って来る、という印象的な登場カットが与えられている。
ゑぎ

 最初に書いておくと、本作のヒロインは綺麗な女優がキャスティングされており(単なる私の好み、かもだが)、シリーズ初期と監督が交代し、女優の好みが変わったのか、と思いながら見た。ただし本作もフラッシュバックだらけの作品で、1960年代初頭の、ヒロイン−ニーデの顛末と、お馴染みのメンバー、カールやアサド、ローセによる現在の捜査場面が、時空を超えてクロスカッティングされる趣向だ。

 また、1960年代も薄ら寒い空気の場面ばかりだが、本作の現在のシーンは、ずっと雨のような雪が降っており、とても寒さ、冷たさが感じられる画面造型だ。この部分は、暖かな農場の場面もあった前作(『Pからのメッセージ』)と趣向を異にする部分だろう。

 本作は優性保護と中絶手術・不妊手術をテーマにした事件を扱っているのだが、発端となる、アパートの壁の向こうに隠蔽されていたミイラ(生前に生殖器が取られている男女の遺体)の造型が奮っている。また見せ方も、カメラはその一体のミイラの口に、ドリー移動で寄るのだ。あと、後半、ローセが活躍するのも良い点で、珍しくアクション場面もあり、なかなか強い。いやそれだけでなく、彼女とアサドとの関係も、重要な要素にもなっており、ローセの役割が大きい。尚、現在シーンで登場する年老いたヒロイン−ニーデを演じる女優も、品のあるお婆さんだし、アサドが贔屓にしているグロッサリーストアの娘ヌールも美人だ。

 ただし、ミステリー的な興趣が少ないのと、相変わらず事件解決の描き方については、犯人側の動向を描く部分が性急に感じる。あるいは、1960年代の場面の主な舞台となる、スプロー島女子収容所の建物やロケーションをもっと禍々しく描くべきだとも思った。気持ち悪さが足りない。

(評価:★3)

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