[コメント] ひとよ(2019/日)
さながら地蔵菩薩のような、母親の無思慮で愚かしいが分け隔てなく子供に降り注ぐ無償の愛情。「女性的性格」などという時代錯誤な言い方を敢えてすれば、彼女が子を脅かす夫を殺害したことに悔恨など残らない存在であることは、彼女が母親である以上当然のことだった。
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映画を見終った人むけのレビューです。
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彼女との折り合いをつけ、母子がおなじ立ち位置に立って語り合うことが、この母子にとってもっとも必要であることから明白だが、互いに我を張り続ける者たちは更なる悲劇を誘発させる。この雪ダルマのように肥え太る断絶のさまは悲しい。そのあたりの意地を張り続ける愚直な老女を田中裕子は的確に演じている。
彼女が「デラべっぴん」誌を自分の性癖ゆえに買っていると言い放ち、それを万引きした子をかばうという非論理の強さを見せつけるのは、彼女の演技力の賜物以外の何物でもない。強いようで恰好ばかりの己の弱さに気づかない女は、やはり彼女らしいよい演技により成り立った。子供たちも芸達者を揃えて飽きさせなかった。
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