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[コメント] 恐怖への旅(1942/米)

面白い!本作もウェルズが演出しているとしか思えないカットが多々ある。私は、特に船内のシーンの閉所における人物の出し入れ、仰角カットの使いようは、ウェルズの演出に間違いないと思ったのだ。
ゑぎ

 しかし、彼自身は、自分は一切演出していないし、船上のシーンは船の模型を作って、スタフ皆で行ったディスカッションに参加しただけだ、というようなことを云っているのだ(書籍「オーソン・ウェルズ―その半生を語る」201頁《キネマ旬報社1995/08》)。

 多分、このディスカッションの結果、彼のアイデアでもって、カメラワークなんかが殆ど決まったのだろうと思う。ジョセフ・コットンドロレス・デル・リオが、船の中の通路を歩き回りながら喋る場面のワンカットのカメラワークなんて、どう考えてもオーソン・ウェルズ印なのだ。

 終盤、クライマックスのホテルの窓枠における対決シーンも、ウェルズ自身はもっと高所の感覚を出したかったようだが(本当は画面で見るよりも高い場所だった、と云っている)、今見ても、十分よく撮れていると思うし、手に汗握る。

 マーキュリー劇団及びウェルズ・ファミリーのファンとしては、ルース・ウォリック(『市民ケーン』でケーンの第一夫人)、アグネス・ムーアヘッド(ケーンの母親)、エヴェレット・スローン(ケーンの親友)といった脇役達の見せ場を、もう少し用意して欲しかったと思ってしまうのだけれど。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)袋のうさぎ

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