[コメント] ミッドナイトスワン(2020/日)
日本の『真夜中のカーボーイ』とおぼしき、愚かしくもゴシック美に溢れた同性愛者たちが辿る顛末。よもや草なぎ剛 が女を一作を通じて演じきれるとは思ってもみなかった。服部樹咲も立派に、女たちの愛を受け入れる「愛の器」を演じ切る。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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この監督はLGBTへの差別とは、対局の場所に立つ立場を強調したいのだと思われる。だが、この作品に描かれるのは実にグロテスクで愚かしい女同士の愛だ。草なぎは服部との愛に盲目となり、服部を手に入れ真の母になるためだけに東南アジアに飛び、みずからの体を女性そのものに作り替える(この唐突さには恐れ入った)。
そして服部の親友は友情を裏切る行為に手を染めながら服部本人を裏切ることができず、そのくちびるを求めることで内面に隠した愛情を明らかにする。彼女の狂気は出場することができなかった晴れ舞台のバレエコンクールの、「親友」の舞踏にあわせてのパフォーマンスと、その終幕の自死によって知れる。だが、服部は首尾一貫した「器」を演じることで、自分が狂言回しであることを露呈する。主役は愛に揺れる草なぎだ。
草なぎの覚悟が並のものでないことは、作られたおのれの乳房を露出させることのみならず、几帳面な彼女(!)に似ない汚濁の部屋で、切除した男性器の痕も生々しい股間の浮かび上がるおむつ姿を明らかにしたことで知れる。草なぎの俳優としての資質はカタチを白日のもとに晒した。醜悪さで共感を拒む愛情は、ここに美しさへのベクトルを現わしたのだ。結果、作品は異様な美に包まれた。凄絶な愛情物語だ。
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