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[コメント] 喜劇 愛妻物語(2019/日)

日本映画に貧乏くささが帰ってきた。かつての可愛げは卑屈へ、包容力は言葉の暴力へと変っても、底に流れるものは変わらない。それがいいことなのかどうか知らないが。最初から「喜劇」と銘うって、くたびれた赤パンツはあざとい。しかし抵抗するのも難しい。

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







日本映画を観ていて楽しいのは、なんと言っても「わかる」ということだろう。

別れろと言われてヘラヘラ笑うのがわかる。それでなんとなく元のサヤにおさまるのもわかる。三人でギャーギャー言ってる川っぷちの対岸が、いかにも地方都市のホテル街(か飲み屋街)の裏手あたりなのもわかる。あのシーンを見ると、すぐさま『洲崎パラダイス 赤信号』の冒頭部が思い出される。ああ追いつめられた男女はやっぱりこういうところへたどり着くんだなとわかる。水川あさみの凹凸の少ないくせに色気のある体つきがわかる。新珠三千代みたいに着崩した和服が似合いそうだ。

日本映画は楽しい。しかし…

わかることだけやっていていいのだろうか?とは思う。中国・韓国映画が来るべき世界(またはどんづまり)を捉えようと時代の舳先で苦闘しているときに、日本は妻の赤パンツに回帰する。そんなことでいいのかと。結局日本はナアナアなのか。結局昭和なのか。結局私小説か。

まあ、いい風に解釈すれば、日本人はまだイノセントを失ってはいないということだろう。豪太にもチカにもまだなにがしかの可愛げと包容力が残っている。この映画を愛さないことは難しい。しかし…

ひとつわかったことがある。

 * * * * * * * * * *

日本はもう少しダメになるらしい。

(評価:★4)

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