[コメント] 未知との遭遇(1977/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この1977年と言うのは映画界にあって大変重要な年であった。
この年、二つの映画の登場によって、以降の映画の作り方が全く違ってしまったと言われる。
その一つは本作であり、もう一作がスピルバーグ監督の盟友と言われるルーカス監督による『スター・ウォーズ』。
SF映画は長らく不遇のままで、それまでまともな映画とは観られなかった傾向があった。確かに1968年には『2001年宇宙の旅』(1968)や『猿の惑星』(1968)と言った傑作も出ているとしても、これを作って売れると言う確信が持てず、SFは相変わらず低予算で作るもの、他の映画の添えものに過ぎなかった。
その状況に本当の意味で風穴をあけたのがこの年だったと言えるし、本作こそがチャレンジャーとしてのスピルバーグ監督の偉大な功績と言えよう。『スター・ウォーズ』と本作がこの年の興業成績でワンツーフィニッシュを飾ることによって、ようやくハリウッドも「SFは売れる」と言うことに気づいたのだ。そしてこれまでのニュー・シネマ流行りで低迷していた映画界に大きな喝を入れることにもなり、現代に至る映画の定礎を築いた作品とも言えよう。それに『スター・ウォーズ』共々、映画にデジタル技術を持ち込むきっかけにもなった。
宇宙人とのコンタクトが決して侵略ではなく友好的なファースト・コンタクトとなっている辺り本作は多分にニューシネマの影響を受けてもいると思われるのだが、それ故に転換点としてはぴったりな作品だっただろう(そう言えば、同じくニューシネマからの転換点と言われている『サタデー・ナイト・フィーバー』も同年だった。やっぱりこの年は大きな意味を持っていたのだろう)。そう言う意味では本作はかなり特異的な位置にある作品で、この時代だからこそ、これが出来たと言える作品なのだろう。それに、ハリウッドの中では特に伝統的、つまり保守的な作りで有名なお陰でニュー・シネマのお陰で営業成績低下に悩むコロムビアにとっても本作は救世主ともなった。
私に関して言えば、この作品の初見は小学生の時のテレビだったと記憶するのだが、その時は正直あんまり面白いと思えなかった。だってテレビアニメとか特撮だったら、宇宙からやって来る悪い敵とばしばしやり合うから面白いのであり、単にファースト・コンタクトだけで終わってしまってはなあ。と言うのが正直な感想だったのだが、後にリバイバル上映で完全版を劇場で観ることが出来た時、考えは180度転換。
これは素晴らしい。物語の盛り上げ方の巧さは確かにある。不安が交錯する異星人とのコンタクトが最後のマザーシップの出現によるクライマックスまで丁寧に描かれているし、音楽でコンタクトを取るという方法も斬新。はっきり言ってこれまで全くの勘違いをしていたと言うことを思い知らされる。
スピルバーグの視点の正しさに改めて感心させられた。このテーマに敢えて直球で挑んだスピルバーグは意気もあり、時代を見据える確かな目も持っていたという事実に改めて気付かせてくれた。本作は確かにこれまでにはなかったタイプの作品であると共に、これ一作しか作れない、いわば一発ネタの作品。それをこれ以上ないタイミングで投入できたのだから。
尚、本作には宇宙人とのコンタクトを主導するラコーム博士役にフランソワ=トリュフォーが登場しているが、これはスピルバーグの指名によるものだとか。
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