[コメント] 82年生まれ、キム・ジヨン(2019/韓国)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
人間、多重人格にでもならなければ、言いたいことも言えない。でも、言いたいことは彼女の中で明晰に言語化されている(ほとんどの人は、言語化すらしてないと思う)。だからこそ、こういう分かりやすい、というか、ロジカルな、精神病を患うのだろうという気はしました。
コメントに書いたシーケンスは、主人公が義理の母(夫の実母)からエプロンをプレゼントされる。でもそれは、手作りとかなんとかではまるでなく、なんかの景品。タダでもらえるもの。大変な思いをして並んだ、みたいな台詞が添えられはするのだけれど。その義母は、正月に実の娘が帰ってくると嬉しくて、自分は台所仕事は休みつつ(と言うか、その場に居るすべての男性陣は、そんな台所仕事なるものからハナから休めている訳ですが)、嫁(息子の妻)にやらせようとする。そこで、啖呵を切ったとしたら、観る者をスカッとさせる作品になっていたでしょう。でも、スカッとさせないところにこそ、映画となる要素があると見切った、そこが製作陣のクレバーだし、誠実なところだと思いました。
実母は、娘が精神を病んでいるなんて現実に向き合いたくないんですけど、その病みっぷりを目の当たりにして、「可哀想、可哀想」と泣き崩れます。もちろん、「兄妹の中で一番勉強ができ」、その明晰な頭脳を維持した彼女だからこそ、娘の精神状態を理解できるのです。でも僕なんかは、これは娘の精神の健常な反応の一種であり、適切な処置を施してやれればちゃんと回復できるはずと、見抜いてやってほしかったと思いました。まあ、ここに(そうでないことに)映画の「作為」を感じたということです。「作為」がなければ2時間でまとまる映画はできゃしませんから、当たり前のことですけどね。
さらに「まあ」を言うなら、夢だった小説家になったという結末は、結局「スカッと」系かなあ、とか。
80/100(22/3/18CATV放映)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。