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[コメント] Mank マンク(2020/米)

何度観ても良いスルメみたいな作品なので、折に触れ観返してみたいと思ってる。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 フィンチャーの新作はNetflixオリジナル作品で作られた。あのフィンチャーもNetflixか。というか、これは是非劇場で観たかったが、半分これが観たいがためにNetflixに入会までした。

 しかし、やはりこれは面白い。

 まずこれは『市民ケーン』(1941)の裏話として、どのようにしてあのとんでもなく挑戦的な脚本が書かれたかを見るバックステージものになっていて、『ザ・ディレクター [市民ケーン]の真実』(1999)などと合わせて観ると、疑似ドキュメンタリー風に楽しめるだろう。

 ただし、本作はリアルな裏話を描こうという作品ではなく、一個の物語として完成させたものだ。物語としてもちゃんと成り立ってるし、充分に面白い。

 本作は結構分かりづらいところがある。それはまずマンクが最初からベッドに伏せっている理由。これは事前に怪我をしたからと分かるのだが、そのため前半はほとんど身動き取れない状況で、会話だけで物語が展開していく。極めて動きの少ない話になる。前半はほぼ会話だけで状況を推し量らないと行けないのだが、それがほとんど説明されていないために状況を整理するのが結構大変だ。

 最初に通して観る限りで分かるのは、なかなか出来ない『市民ケーン』の脚本に対してウェルズが何度も催促しているが、マンク自身はどこ吹く風で、一日ちょっとだけシナリオを書いては、あとは寝てるか、他の客と喋ってるだけ。そんなマンクを秘書が甲斐甲斐しく面倒を看ているということくらい。会話自体が刺々しいもののため、観ていて気持ちの良いものではなく、動けない人間を撮ってどうするんだ?と思ってたら、思った以上に話が動く。いや、動くと言うより“跳ぶ”。

 なるほど過去とのザッピングで話を展開させるのだと分かったが、しかしこれがなかなかにややこしい。複数の時代をザッピングするため、一体今いつの時代を観てるのかぱっと見で判断しにくくて、状況が把握出来ない。

 これは恐らくこの作品を製作する際、Netflixというプラットフォームを最大限に使おうとしてのことなのだろう。それはつまり「繰り返し観る」という前提であろう。何度でも観られるし、ワンクリックでどこからでも観られる。ソフト化を待つことなくそれが出来るのだから、その強みを最大限活かした作りなんだろう。

 私はとりあえずそう言う観方をせず、普通の映画みたいに通して一回観ただけなので、とても把握できてない。

 それでも現時点で分かるのは、激動する1940年という時代のカリフォルニアの出来事をベースにしているという事。欧州で戦争が始まったとは言え、アメリカはまだ対岸の火事で、それでもアメリカはこの世界大戦にどう対応するかが喫緊の問題になっている。そんな風景をカリフォルニア州知事選挙に絡め、こんな時に映画作りをしてて良いのかとか、社会正義と映画作りの境目はどこかなど、いろんな意味で1940年のアメリカを表そうとしたことは分かる。

 そして一方、『市民ケーン』そのものを主題にしていることも分かる。それはこの作品がどれだけセンセーショナルな作品であったかを繰り返し述べてている事、そして敢えてモノクロの画面構成は、『市民ケーン』のものを踏襲してるカメラアングル。

(評価:★5)

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