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[コメント] アンモナイトの目覚め(2020/英=豪=米)

激し海風に見苦しく乱れた髪。たるんだ肉で弛緩した体型。言葉を寄せつけない不快な仏頂面。そんなケイト・ウィンスレットの風体が拒絶された者の悲愴の証として“疎外”のリアルを醸し出す。女だから認められないという“どうしようもなさ”からの解放と矜持。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







メアリー(ケイト・ウィンスレット)が、心を閉ざしてしまった原因が男社会の学会からの軽視だけではなく、娘時代の失恋と女性のセクシャリティに対する閉鎖性にあることが示唆される。メアリーは、女であるという自分ではどうしようもない事実によって、化石の発見という社会的な栄誉と、同性との恋愛の成就という二つの“喜び”を封印されてしまったのだ。

彼女の「隠遁と沈黙」は、あたかも何億年もの時の重さとともに封印された化石のように頑なだ。そんなメアリーが、どこまでも奔放なお金持ちの若奥様シャーロット(シアーシャ・ローナン)の無邪気な“善意”に対して示す毅然としたプライドが切なくも高貴だ。

シャーロットが、メアリーの心を溶かし切るには、いま少し時間がかかるのだろう。そんな光明を残して、この物語は「ふたりの始まり」として終わる。

余談です。近年、くどい説明や安易なムードに走りがちなにな邦題が多いなか、このタイトルは久々に主人公の心情と物語の深みを示唆した良い命名だと思いました。

(評価:★4)

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