ちょっとデリカシーの足りない男子(若葉竜也)を軸に、四者四様の女子のリアルがからまる小さな狂騒曲。自由と軽率の境い目が分からない雪（穂志もえか）。秘めた思いにあらがえない冬子(古川琴音)。意志の強さがもろ態度に出る可愛げのない町子（萩原みのり）。奔放なようで押しの弱さのある掴みどころのない定城(中田青渚)。そんな女子たちに共通するのは素直な“頑固さ”だ。

若い役者さんたちが作りだす“あるある感”はアドリブではなさそうで、状況設定の的確さと巧みな会話設計、カメラのリズミカルな切り返しのテンポ(編集)や、長回しの間が生む緊張感や可笑しみ、といった今泉力哉の演出の巧みさにあるのでしょう。狭い街を舞台に出会いの妙で人の心の綾をあぶり出す、内田けんじの緻密さとホン・サンスの緩さの「良いとこ取り」みたい。

今年(2021年)はなかなか好みの新作に出会えていなかったのですが、4月半ばにしてようやくの私的ベスト10候補です。

余談です。20年前にも市川準監督の『ざわざわ下北沢』って群像劇がありました。さらにもっとまえ、私の学生時代。友人が住んでいたので下北にはよく行きました。もうそのころから若い奴がフラフラ、ウロウロしている街でした。小田急線は地下に潜ってしまいましたが相変わらずみたいですね。ずいぶんご無沙汰しています。