[コメント] マーメイド・イン・パリ(2020/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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誤解の無いように言っときますが、本来この手のフィクションは大好物です。
この映画を観て、フィクションは飛び出す絵本だということに気付かされました。 絵本の中の物語世界から飛び出して、現実世界(の観客の心)に何かが刺さる。だってそのためにわざわざ「作り話」を創作してるんだから。 でも、この映画は全然刺さらない。自分で描いた絵の中で自己満足している印象。全然飛び出す絵本じゃない。もっとこっちに飛び出して来い!その火を飛び越えてこい!『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』の方が全然いい!
料理に例えるなら、余計なソースや味付けが多くて素材の味を生かせてない感じがするんです。下手なフランス料理か。 「惚れ殺しの人魚と惚れない男」という素材だけでも充分美味い料理になったと思うんですけどね。どうして余計な味付けをするかな?
例えば、冒頭のローラースケート。 オープニングアニメからあんなに強調するなら、事態の解決に一役買わなきゃ「小道具」とは言えない。それだったら最初っから「トゥクトゥクに乗る男」でよかったんじゃない?無駄な設定が多い割にその設定を回収できていないんですよ。そもそも店の経営赤字はどうなったのさ?録音機材を自宅に移動するための設定で終わってない?まさか真珠の涙を現金化して倒産を免れましためでたしめでたしなのか?めでたいのか?殺人犯だぞ?お前は犯人隠避と逃亡幇助罪だ。
風呂にアヒルちゃん浮かべて喜んでる40歳男性と、お腹の子の父親を殺されて未亡人となった女医と、どっちに共感する?私は後者だな。だってあんなにイチャラブ見せつけられてんだぜ。 なので、女医目線で観ている・・・とまではいかないまでも、可哀想な女医に気持ちが残ってるから、このバカップルを微笑ましく見られない。たぶんこれが「刺さらない」要因。 だいたい何で女医だった?主人公のためのご都合主義じゃない?
そもそも人魚って何のメタファーなんだろう? 例えば、「恋した女の子は異星人でした」ってキャッチコピーだった『パーティで女の子に話しかけるには』なんかは、男の子にとって女の子はまるで異星人という暗喩・・・かと思ったらエル・ファニング本当に異星人役かよ。エル・ファニング最高かよ。
そう考えたら、逆な気がしてきた。
いつまでも子供じみたバカ男や全ての女性が恋愛対象だと思っているキザなおフランス野郎らが次々と「惚れ殺しの人魚」に殺られていく中、妻が妊娠して幸せの絶頂にいる夫だけが人魚に惚れない(死なない)って話だったら、男女や夫婦や家庭を巡る「飛び出す絵本」「フィクションにコーティングされたリアル」になり得たろうに。それなら人魚が「成就できない恋=浮気」のメタファーとして活きるんですよ。 その上で「夫が浮気しない」のが「おとぎ話」ってのがミソ。
(2021.02.24 渋谷HUMAXシネマにて鑑賞)
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