往時のファッションやインテリアが壮麗で、リリー・ジェームスの清廉な美しさが映える。彼女は『ウィンストン・チャーチル』でもタイピストを演じていたが、時代背景に馴染むんだよな。

作劇的には、占領中の出来事の真相が次第に明らかになっていくことで関心を引っ張っていくが、読書会の面々の純朴な善良さ、ホテルのメイドのこれまた純朴な意地悪さの造形が効いている。本や読書という要素の、本筋への絡み方は抑制気味。婚約者やマネージャーの役回りは序盤から容易に想像でき、そういう点ではオーソドックスなお話ではある。

婚約者グレン・パウエルが判明した重要事実を伝えようとした瞬間パッと遠景に切り替わる演出や、チャーター機での別れのシーンも印象的。