コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 太陽の蓋(2016/日)

菅当時首相側からの福島原発事故対応への弁明とテンコ盛りの東電批判。主張において『Fukushima 50』と一対なんだろうが、あなたメジャー館封切こなたマイナーという配置自体が現在の政治状況のトレースという感想。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭から愉しいギャグが続く。事故直後、原子力安全・保安院の手島院長は「今のところ特に問題ないと聞いている」電源停止、全冷却機能停止。院長「判りません」「私は東大の経済出身です」。

炉心の冷却装置がダウンしている。外部電源を持って行く必要があるが電源車は重すぎて自衛隊ヘリでも運べない。政府主導で寸断された道路を苦労して運んだが、プラグが合わずに使えなかった。災害対策本部の職員がポカンとしている。「東日電力ってのは電気屋じゃないのか」

万城目(斑目ですな)原子力安全委員長語る、ベントしかありません。原子炉は水蒸気でパンパン。ベントすれば水蒸気が入る(記者、放射能は一緒に外へ出る)。ベントの準備に二時間。どのくらい放射能は外に出るか。万城目「世界中でやったことありませんよ」。官房長官はベントを会見で事前報告、三キロ以内避難済み、放出される放射能は微量と見られると。しかしそれからもベントを東電は実施せず、官邸に聞かれても沈黙、万城目は相談済みらしくぐにゃぐにゃ云っている。

ベント弁は手で開けるしかないが近づけない。現場は決死隊、ベント弁を手で開けるのは年寄りの役目と息子らは引き留められ、中年の職員たちが入っていく。しかし無音のなか、水素爆発の様が映される。「いまから一時間ほど前」の映像を対策本部はテレビではじめて確認している。万城目はアッチャーと頭を抱え「爆発はないっていいましたよね」と云われても返事ながない。テレビは地元はリアルタイムで見ており保安院も把握していた。官房長官のしどろもどろの会見。翌日に計画停電。三田村邦彦が淡々と国民に訴えている。

官邸で東電フェローは、福島と直接やり取りしていないと装っていた。総理の現地入りは「行かなきゃいかないで叩かれる」と部下が対話している。よく問題になるこの一件、何で問題になるのか私は判らない。後日、首相一行が東電に乗り込むと、モニターで現場と繋がって官邸にこない情報を把握しているのを知るのだった。これもギャグ。

東電から現場700人の撤退の申し出(現場ではなく本店が云ったと福山から北村の記者に説明されている)。認めたらこの国は終わりだと首相は拒否。法的にどうすると部下に詰め寄られて官房長官はそんなこと云っている場合じゃないと怒鳴り「撤退はありえない」と三田村は怒気を含んで訴えている。首相は事前に東電から撤退はしないと説明があったが信用していなかったと。

2号機炉心の水が抜けてメルトダウン、土壌汚染すれば100キロ以上に亘って住めなくなる、4号機がやられれば250キロ圏、東京は終わりだと干されて警備員している先輩が北村に説明する。彼は後日、2号機は一番多くの放射性物質を出した、4号機はたまたま水が入って救われたと語っている。

一号基で働く息子の一家が並行して取り上げられる。福島で夜停電、余震が来て一家で何も判らないとボヤイテいるのがリアル。翌日に亭主が昼に戻って来てベントってのが遅れているからバスに乗れと云われたと妻と母に告げる。体育館にいると20キロ以上離れるよう指示が出たとまた移動。息子は非番だが原発に集まる。息子は事故後も働き続けていて、北村になぜ辞めないのか問われて責任の取り方が判らないと呟いている。この収束は判るように思った。

仲の悪いライバル社と喧嘩しながら、カップ麺を貰ったらひとつ千円請求される件が面白い。いまや貴重品と云われ、北村は千円払って全部持って行くというオチ。彼が政府を潰したと友人の政府関係者は恨み事を述べている。事故当日、横浜では帰宅困難者6万人。数日後に渋谷で通常の放射線量100倍。短尺版と長尺版があり、長尺版での鑑賞。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。