[コメント] マリグナント 狂暴な悪夢(2021/米)
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「じゃ、後頭部に裏の顔(物理)をくっつけてみよう」という、大変ジェームズ・ワンらしい素朴さ。
如何にジャンルを横断してみせても、どんでん返しやゴアを組み込ませても、どこまでもセオリーに忠実という意味でジェームズ・ワンはいつも素朴である。発想の転換に見えても、あくまで素朴である。その素朴は欠点ではなく、ほぼ常に一定水準の品質を約束するが、逆に言えば、一定水準以上の品質の保証はしない。廃病院、地下スラム、屋根裏、ガブリエルによる精神侵食(粘着質のサウンドエフェクトとともにモーフィングCG処理される)、姉妹愛、どの演出もため息が出る表層感。ダレる頃合いでビデオゲーム的なゴアアクション。何度も寝落ちした。
ファーストフードのセットメニューみたいな映画である。何の後味も残らない。それで何か悪いのか?もちろん悪くはないし、こういうものだって作るのは簡単でないことは当然わかる。この人の映画が一定のムーブメントを作り出したことにも一定の敬意を表したい。しかし、この人のフォーマットはこの十数年の類似ジャンルの映画を怠惰にしたように思えてならない。昨今、別作家のブレイクスルーの兆しが見えているが、未だにこの人は取り残されている。
これだけ嫌いで、何故観たのか。私が、この作品の監督をジェームズ・ガンと勘違いしていた愚か者だからである(広告の惹句を「あのジェームズ・ガンがホラーを撮った」と誤って記憶していた)。開巻で「しまった」と思ったが、寝落ちしながら結局観てしまった。ファーストフードの力である。
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