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[コメント] 愛欲の罠(1973/日)

清順の日活活劇と大正三部作のミッシングリングを埋める人を喰った喜劇。殺し屋荒戸源次郎と殺しを指示し続ける組織の裏切り者大和屋竺、この二人がドスの効いた造形で存外にハマっていて、日頃からブイブイいわせる生活していたんだろうと偲ばれる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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要人殺して組織に狙われるふたりという展開。殺し屋西郷小水一男とマリオ秋山ミチヲのペアのファッショ型リンチは極彩色で倒錯的で、『ツィゴイネルワイゼン』の先駆と見ていいんだろう(『気狂いピエロ』も想起される)。交替で人形になり、絵沢萌子を強姦するショットに強烈なものがあり、バックでヨガる絵沢のフルショットに得も云われぬブラックユーモアがある。

荒戸はべニア張扉のこの世の果てみたいな娼館に籠る。ここは非合法とごちる経営者の婆さんがいい味出している。白塗りの少女安田のぞみがまた大正三部作好みで、パロディ系日活活劇の荒戸とふたりで、インポで抱けない云々で延々やっている。安田も最期は殺し屋二人組の機械ファックで殺される。

いいコメディがたくさんあるのが本作の美点。序盤の荒戸と絵沢の食事始めるのかと思ったら同衾という清順ジャンプカット、米要人の娼婦に指名され英語のメモ読んでファックユーと話しかける中川梨絵、荒戸が路地裏逃げていると突然ヌードショーが始まるのも清順好み(バックダンサーがパラソル回している)、要人射殺されて遺体の跡に白線引いて自ら現場検証しているギャングたち、植物園のカラー舗装での決闘。

最後は映画館でひとり座っていた山谷初男がヘロヘロ笑って荒戸に射殺され、荒戸はスクリーンバックに観客に礼をして完。人を喰ったような映画であった。浮かれた作劇を「朝日のようにさわやかに」なる陰鬱なフォーク(ジャズ曲とは別物)がバランス取っている。これは別題を兼ねる由。

(評価:★4)

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