[コメント] 絶頂姉妹 堕ちる(1982/日)
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コールガールの姉妹、江崎和代と倉吉が被る結婚差別と就職差別が描かれる。娼婦の絵沢の娘ふたりは特に説明はなく、必然と云った感じで娼婦稼業を継いでいる。コールガール手配師の小林稔侍は妹の勤め先、スーパーやパチンコ屋に電話してコールガールだとバラして辞めさせてしまい、復帰を迫る。倉吉と小林は独特の煮え切らない応対をする。被害と加害の共犯関係があり、介在するのは金銭に違いない。スタンド立てた自転車を漕ぐ倉吉のショットが肉感的にそれを伝えて来る。
姉は商事会社員中丸信と婚約したが、妹が嫉妬から彼を寝取り、姉の過去をバラシて破談にする。四人で高層ビルのレストランで食事して帰りに母娘で涙の連絡船を愉し気に唄う幸福はカリソメに終わる。姉が中丸を刺すとアパートの扉が開き、見事な奥行きの構図で高層ビルの夜景が現れる。あれは四人で食事したビルなのだろう。
重要なのは(役柄としては指定されないが)趙方豪の在日コリアンとしての佇まいで、話は風俗に限らない差別一般への広がりを持った。姉と同棲しているが別れたい姉は彼に射精させないという同衾に虚しいユーモアがある。妹は彼も取ってしまう。妹の怒りは外部へ向かわず、ただ姉への嫉妬に内向する。そしてルージュ塗って毒々しくコールガールに復帰する。
侘しいアパートの畳六畳間と廃材置き場に80年代の明るい採光で撮られる味がある。異端のやりきれなさは80年代だからこそ伝わるものがある。六畳間で扇風機あたる妹の佇まいがいい。廃品置き場ではトラックで母と嫌々交わる男の嫌がり方が印象的。妹はそれを遠目に冷淡に眺め、取引で自分も抱かて窓から半身を出して空を見上げるが空は映されない。姉妹はナルセ『稲妻』と同じ神社に参っている。本作の姉妹は80年代の三浦光子と凸ちゃんだった。
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