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[コメント] tick,tick...BOOM!:チック、チック...ブーン!(2021/米)

私はブロードウェイミュージカルに(も)詳しくなく(ミュージカル映画は大好きですが)、また、本作も事前情報をほゞ遮断して見たので、途中で実話だったのか、と驚いた、という次第。
ゑぎ

 冒頭、ハンディビデオカメラ映像で、主人公のジョナサン−アンドリュー・ガーフィールドが登場。司会をしながら、ピアノを弾き唄う。バックにはバンドとボーカルの男女。あまり大きくないライブ会場だ。このライブ会場の場面が、タイトルのショーを指しているということか。ガーフィールドの歌と語りで、1990年の約一週間のお話が、回想形式というか、クロスカッティングされる趣向だ。

 ミュージカル・シーンでは、まずは、ジョナサンが親友マイケル−ロビン・デ・ジーザスの高級マンションを訪ねる、「No More」の場面がいい。ジョナサンの安アパートと比較しながら幻想を盛り込む。後半部のエントランスでのパーティー風イメージ。少しだけ高速度撮影で、スローになっているダンスの見せ方が心地よい。続いて、ダイナーでの「Sunday」という曲の場面が、非常に面白かった。私は全編でも、こゝが一番気に入った。「家で食べればいいのに」って歌詞がいい。そして、恋人スーザン−アレクサンドラ・シップとの別離を引き起こす言い争いの場面で、ライブ会場のガーフィールドとヴァネッサ・ハジェンズの2人によって唄われるコミカルなカントリー風デュエット曲「Therapy」も楽しかったし、プールの底の30の数字から、五線譜イメージが出現し、音符が並んでいく場面も目を引いた。

 ただし、主人公ジョナサンが、苦労の末に作曲した「Come to Your Senses」という曲の見せ方が、私にはイマイチに感じられたのと、親友マイケルとの子供の頃からの思い出のシーンを、フラッシュバックし繋ぐ「Why」(ウェストサイド物語の「Cool」と「Tonight 」のフレーズがちょこっと挿入される)の場面がちょっと長い、と思ってしまった。なので、後半になってテンションが下がって終わった感がある。

 プロット展開上も後半は寂しい。しかし、もともと華々しい栄光の時間は描かれない、という題材に内在的な問題であるから仕方がないとも云えるし、それでも、映画としては、その後のジョナサンの人生がナレーションで簡潔に示されるのだから、もっと盛り上げることもできたと思うのだが、そういう見せ方をしなかった選択は、懐深く思い、感嘆した。

#2021年11月27日、見終わった直後に、その日のニュースで、スティーブン・ソンドハイムの死を知った。本作のブラッドリー・ウィットフォード、よく似ていました。

#ジョナサンの部屋(寝室?)の壁に、ルイーズ・ブルックスのポスターがある。『倫落の女の日記』の英語版ポスターだ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)プロキオン14[*]

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