[コメント] MIFUNE THE LAST SAMURAI(2015/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画の宣伝番組というかYouTube限定配信の、水道橋博士となべやかんが東宝撮影所近辺のロケ地や黒澤明邸跡地、三船敏郎邸跡地なんかを巡る宣伝動画があって、この番組で解説をしてた「東宝映画研究家」の高田氏(30年来の知人なんですけどね)の話の方が、このドキュメンタリー映画よりなんぼか面白い。
三船邸の近隣で河川が氾濫したことがあって(たぶん山田太一「岸辺のアルバム」で描かれたあの台風だと思う)、取り残された人の救出用に三船が自宅のボートを警察に提供したとかね。 YouTubeでは語られてないけど、『悪い奴ほどよく眠る』のウェディングケーキと『マタンゴ』のキノコ(食用)は撮影所近くの同じ洋菓子屋(たぶん風月堂)で特注で作られたとかね。『天国と地獄』の特急列車の乗客は「(当時高額だった)特急に乗れる人は高収入」という黒澤のこだわりで高級住宅街・成城の住人のみをエキストラに使ったとかね。東宝映画研究家はそういう研究をしてるんだそうですよ。何の役にも立たんけどね。
研究家とまではいかないまでも、私も含めこの映画を「観たい」と思う人は、マニアかコアなファンだと思うのです。ところが映画自体は一般人向けの薄っぺらい内容しかない。 「『蜘蛛巣城』のラストはamazing!」なんて今更言われんでも知っとるわ。 もっとも、「あんなの大学の弓道部にやらせてんだから危ないに決まってるわよ」(by野上照代)はさすがに知らんかったけど。 ていうかさ、黒澤・三船のドキュメンタリー物は、もっと野上照代に時間を割かなきゃ。そして野上照代の「ボヤキ」を活かさなきゃ。このドキュメンタリー、彼女のボヤキを全部カットしてると思うよ。あんな殊勝なこと言う人じゃないもの。なんなら野上照代のボヤキ独演会でもいいくらい。
『マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶』ってドキュメンタリー映画もそうだったんだけど、耳かき一杯分も掘り下げられない三流ドキュメンタリーなんです。この手のドキュメンタリーは皆そうなのかなあ? でも岩井俊二の撮ったドキュメンタリー『市川崑物語』は滅法面白かったけどな。
(2018.05.13 有楽町スバル座にて鑑賞)
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