[コメント] ただ悪より救いたまえ(2020/韓国)
予告編では『新しき世界』コンビが野獣のような殺し屋になって激突する……こんなもん面白いに決まってるやんか! という感じだが、実際は予想よりも渋め・暗め・画面の湿度は高いが描写の温度低めのアジアンノワール。
ファン・ジョンミンとイ・ジョンジェが激しいバイオレンスの中でお互いの情念がぐっちゃぐっちゃになるんやろうなあーお前が俺で俺がお前でみたいな……と勝手に想像していたが、実際のところそっちの関係性は薄い。
イ・ジョンジェは死神みたいに突然現れて去って行く天災みたいなノリで(省略多めの描き方なので特にそう見える)、なんていうかバイオ3の追跡者みたいな感じだ。一方ファン・ジョンミンは劇中ずーっと疲れていて、すべてのことに嫌気が差していて、殺しも拷問も淡々とかつ自暴自棄気味に行う。
ノワールの男主人公に必要なものは「澱のように沈殿した人生への疲れ」だと個人的には思っているが、本作のファン・ジョンミンはその点で満点に近い疲れっぷり。その帰結として最後の最後に見せる表情のなんとも言えない虚ろな叫びもとても味わい深い。
途中で成り行き上バディになるショーパブのニューハーフ役パク・ジョンミンがやたらとかわいらしいのだけが一服の清涼剤で後は全編どす黒い。新年早々に見るのにちょうど良い目出度さの映画だった。満足。
(2022/01/13 劇場にて鑑賞)
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