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[コメント] ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ(2021/米)

「オール・オブ・ミー」の映画。タイトルは、ビリー・ホリデイアンドラ・デイが「奇妙な果実」の歌唱を続けることで、米国政府から睨まれる、すなわち、連邦麻薬局のアンスリンガー長官−ギャレット・ヘドランドとの対決のことを指しているのだが、
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 それ以上に、ジミー・フレッチャー−トレヴァンテ・ローズとの恋愛関係を象徴する「オール・オブ・ミー」がフィーチャーされているように感じられた。つまり、「奇妙な果実」も勿論、重要な使われ方だが、「オール・オブ・ミー」の方がより印象に残るということで、ある意味、テーマ性がボケてしまっていると指摘したくなるのだ(いや、本作のタイトルがこれじゃなきゃ、全然いいと思うのですよ。私は映画のテーマとかストーリとかに重きを置いて見るタチじゃないですが、実は、タイトルの付け方にはこだわるところがあります)。

 「オール・オブ・ミー」は序盤の最初の聞かせどころのシーンで唄われるだけでなく、エンドロールもこの歌がバックだし、トレヴァンテ・ローズとの場面では変奏された劇伴が流れるのだ。対して「奇妙な果実」は、前半から、唄い出しだけは聞かされるが、実際にワンコーラス以上の歌唱シーンは、後半に入って、ホリデイがツアーに出た後のコンサートシーンだけだ。KKKのリンチ場面から、幻想的な麻薬の注射シーンといった、これもある意味彼女の人生を象徴するようなイメージ処理を見せた直後に唄われるので、確かにハイライト的な演出だ、と云って間違いないとは思うが。

 さて、書くのが遅くなったが、本来、最初に書くべきべきは、オスカー・ノミニーのアンドラ・デイのナイスファイトについてでしょうね。ファイトというのは、何度もヌードになる(胸が映る)、というようなところも指しているが、彼女の歌声も会話の声も、ビリー・ホリデイ本人としか思えなくなるのだ。少なくも、レネー・ゼルウィガージュディ・ガーランドよりも、数倍は似ていると思った(ルックスは、ホンモノのホリデイの方が綺麗だと私は思うけれど)。

 あとは、ホリデイの友人役で、女優のタルーラ・バンクヘッドナターシャ・リオンが登場するが、この役は、もっと貫禄のある人にやってもらいたかった。ホリデイと並んだ時に、とても小柄に見えるのも私のイメージと違った。全然、大女優に見えない。また、カラーからモノクロへの転換や、微速度撮影など、古い映画、あるいは記録映像のニュアンスを表現しようと試みた部分が、何回も出て来たが、なんとも中途半端な感じがした。普通に繋いだ方が良かったと思う。

(評価:★3)

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