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[コメント] やがて海へと届く(2022/日)

冒頭のアニメーションが実写に転換されるカットは、職場(ダイニングバー)の岸井ゆきのが、窓外を見て涙を流す後ろ姿だが、このシーンに流れている音楽(店長の光石研が選曲したCD)は「我が恋はこゝに Our Love Is Here To Stay」なのだ。
ゑぎ

 新歓コンパでのキス、初めて二人が暮らし始める夜の、狭いベッドに二人で寝るシーンなど含めて、浜辺美波と岸井の精神的な関係のありようを表象しているのだろう。

 浜辺の元恋人−杉野遥亮の登場シーンは屋内だが、かなりのロングショットで、誰か判別できない。あるいは、続く、岸井が浜辺の部屋で、猫のポーチやビデオカメラを見つける場面の緩やかな時間の使い方は、この監督らしいなぁと思う。本作の演出上の特徴で顕著なのは、人物二人を縦に並べたフォーカスの演出だ。ことごとく一方にしか焦点を合わせないのだ。例えば、新歓の居酒屋のシーンで、浜辺と岸井が、ほゞ横に並んだ(少しだけ奥行きがある)ショットでも、ピント送りを複数回見せる。あるいは、狭いベッドに二人で寝るシーンでは、岸井にしかピントを合わせない。

 また、ドローンでの大真俯瞰からティルトアップして海と空を映す、というカメラワークが2回ある。最初は岸井と浜辺のシーン。2回目は、岸井と新谷ゆづみ(民宿の娘。『麻希のいる世界』の由希)とのシーン。新谷の重要性もこのカメラワークからうかがえるというものだろう。彼女は、中嶋朋子がビデオ録画する素人数人のドキュメンタリー部分で登場する。実は、新谷も素人の一人かと始めは思ったのだが、涙を流す演技が見事で驚いてしまったのだ。さらに、早朝の海岸で、岸井と二人の会話シーンが与えられており、わらべ歌を唄う。正直なところ、私としては、明け方の空の光のとらえ方含めて、こゝが本作の白眉だと思う。このシーンでは、180度のカメラ位置転換が行われている点でも強烈に印象に残る。

 ただし、ドキュメンタリー部分が奏功しているかと云うと疑問に感じる、どうにも散漫になった感覚が私には残る。また、終盤になって、前半に見せられたシーンを、浜辺に焦点を合わせ直して反復する部分がある。新歓のシーンや、一緒に暮らすことになった日の夜の会話、引っ越しの日などを浜辺側から描いた部分(文字通り、フォーカスが浜辺に合っているシーン)だ。これも私は、冗長と思う。これらシーンを積み上げても、浜辺美波を想う岸井ゆきの気持ち(あるいは観客の気持ち)の切なさに奏功していないと感じられるのだ。あるいは、幻想の中で、二人がキスしかけるショットあたりで終わっていれば、秀作だと思えたかも知れない。依然、この監督の演出基調は好きなのだが。

(評価:★3)

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