[コメント] 死刑にいたる病(2022/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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最近また忙しくなって足が遠のき気味ですが、レビューできてないだけでとりあえず細々と映画だけは見てます。そんでもって何とか久しぶりの劇場鑑賞してきました。
元々本作は宣伝時から注目していて、まあ白石和彌監督作品ということも大きかったですが、何よりもパッケージの阿部サダヲさんの目ですね。インパクトが強すぎてめちゃくちゃ気になってました。
実際本作を評価させてもらうならかなり高評価になるのですが、その要因の大きな割合としてキャスティングが挙げられると思います。と言っても阿部サダヲさんがドンピシャなのは言うまでもなく、とにかくあのキャラクターはこの人しかいないなと思わせるほどの適役でしたね。 岡田健史くんも良かったですね。Fラン大学に通う鬱屈とした感じがいい具合に出てました。あとは宮粼優さんは初見の女優さんでしたが印象的でしたし、終わってキャストを確認してからの岩ちゃん出演には衝撃でした笑
ストーリーとしては阿部サダヲ演じる榛村は24人もの殺人を犯した犯罪者であり、死刑囚である。そんな榛村から岡田健史演じる雅也の元に一通の手紙。会って話がしたいと言われ拘置所に面会に行くと、「立件された殺人のうち、一つは自分のものではない」と語る。そして雅也は事件の真相を探っていく、というミステリーサスペンス。
まずもって榛村のシリアルキラーっぷりには肝を冷やしっぱなしでしたが、何が怖いって本作の主題は明らかに「人が人を操作すること」なんですよね。 サイコパスで且つ相手を操る話術と言えばやはりハンニバル・レクターを思い浮かべるわけですが、白石和彌監督であれば『凶悪』の先生を思い浮かべたりもしますかね。 とにかくそういった類似作品もある中で本作ならではの魅力は、やはり人は無意識のうちに身近なところで操作されている可能性がある、という点だと思いました。
そもそも榛村の行動目的は快楽殺人ではないというのが一際不気味さを引き立たせているんですよね。正確には猟奇的殺人に喜びを見出しているわけではなく、そこまでの過程、つまりは相手を思いの通りに操ることに悦を感じているんですよね。
これを本作はラストまでしっかり引っ張ってミスリードを貼り続けます。 たとえば榛村と雅也が直接顔を突き合わす面会室のシーン。ガラス越しに相手の顔が写る演出なんかだとパッと浮かぶところでも『三度目の殺人』とかあるし、擦られまくった演出だとは思いますが、やはり次第に重なり合っていく演出は2人の境遇に関してのミスリードを上手く使っていましたし、雅也の母親の「あの人にそっくり」発言はどう考えても関係性を仄めかしますよね。彼女の指先にハッとしてしまうとか、首絞め殺人未遂のシーンとかもそうですし、何ならそもそも秩序型殺人犯というあれすらもきっとそうなんだろうと思います。だからこそ雅也は生かされたのでしょうし、そもそも快楽殺人を楽しむ人間などではなく、人を自分の思いのままにして崩していくのが何よりも彼の本質なんだろうと思います。
だとしたらあの想像以上にグロテスクな生爪剥がしとか手足首ブラーンなやつとか、伏線のためにしては結構きつい演出ぶち込んできましたよね。まお白石和彌節って感じではありましたが。
とにかく阿部サダさんのシリアルキラーっぷりは抜群に良かったですし、ラストの余韻も含め、どこまでが手の内なのか、どこまで操作されているのか、という恐怖心を植え付けるラストは見事でした。
ところで全然余談なのですが、今日劇場で初めて腹痛と闘いながらの鑑賞でした笑 ああいうのって波がありますよね笑 2時間も動けないとなかなか辛いものがある、ということも学べました笑
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