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[コメント] ハケンアニメ!(2022/日)

これも力のある映画だ。この監督−吉野耕平の器用さも良く分かるし、同時に、こんなプロジェクトを統率するって凄い力技だろうな、とも思う。
ゑぎ

 ただし、主人公の吉岡里帆が、登場から前半、とても監督が務まりそうには見えない。芯の強さは感じられるが、生気がない、オドオドしているし、くたびれ果てているだけに見える、っていうのは、もちろん、後半へのフリみたいなものなのだが、ちょっと私は興を削がれてしまった。

 その分、前半の小野花梨は本作でも怪演と思わせる。脇役として美味しい扱いだと思う。しかし、中盤以降、吉岡と中村倫也に加えて、小野と工藤阿須加の場面がクロスカッティングされるのは、盛り込みすぎと云うか、未整理な感覚が残るのだ。小野の役割は、序盤のアニメ雑誌の表紙のクダリだけでも良かったんじゃないかと思う。未整理な(大して機能しない)プロットということでは、吉岡の隣人の子供の役割りにもそう感じる。あるいは、吉岡の子供時代のフラッシュバックも画面が弱い。

 だが、もっとも興奮させられたのは、上でクサした前半部の吉岡と中村との対談シーンかも知れない。こゝは、トレイラー(?)の出来も吉岡と中村の演技の強度についても良いと思った。司会者のアホぶりはワザとらしいが。あるいは、後半になって挿入される、二つのアニメーション作品の断片も満足感の高いものだし、それぞれの作品をブルーとピンクの象徴的な色遣いで、実写画面に文字情報(ニコニコ動画風コメント)を含めて氾濫させる演出も、とても迫力があったと思う。このあたりの造型が、力のある映画だと感じさせる部分だ。

 終盤になって明確な吉岡の成長譚となる展開は、落ち着きが良く、後味がいい。進行の前野朋哉が憎まれ役を上手く演じているし、単なる悪役でない、チームの一員として収束するのも良い点だろう。柄本佑も儲け役だが、コージーコーナーの苺エクレアを見て泣く吉岡に対する彼のリアクション演技(というか演出)はワザとらしい。フットクラップはお見事。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)おーい粗茶[*]

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