[コメント] エルヴィス(2022/米)
比較するのは気が引けるが、『ボヘミアン・ラプソディ』の方がカメラワークは凄いと云っていいだろう。本作『エルヴィス』も、ドローン利用がもっとあるかと予想していた。ただし、文字情報を画面に映し込む処理の多用はキライ。
また、エルヴィス−オースティン・バトラー登場から序盤は、彼の「運動」にフォーカスし過ぎていると思う。この点も、ちょっとがっかりした。この作劇も理解できるが、彼の音楽性、そのブレイクスルーにも、もっと焦点を当てて欲しいと思いながら見たのだ。しかし「運動」を重要視するのは、ある意味、映画的かも知れない。「音楽」ということで云うと、終盤近くのインターナショナル・ホテルのステージ準備シーンにおける、「ザッツ・オールライト」のアレンジ作りの場面、こゝが白眉だと思った。彼の音楽性、天才がよく分かるシーンになっている。
プロット構成的な好みを書かせてもらうと、本作のタイトルは「エルヴィスとパーカー大佐」とすべきだったんじゃないかと思うぐらい、大佐役のトム・ハンクスがプロットを支配しており、これも、私はどうかと思った。冒頭が最晩年の大佐の描写で、彼のフラッシュバックで展開する、という始まり方から、うざったい。ハンクスは流石の存在感だが、役作りだろうが、なんか綺麗じゃないのだ。また、プリシラとの場面は僅少だが、エルヴィスがドイツで兵役中のシーンでの、初めてのキスのショットといい、終盤の、エルヴィスがプリシラや娘と会う飛行場のシーンといい、プリシラ役−オリヴィア・デヨングは良いシーンに恵まれていると感じた。そして、このすぐ後の「アンチェインド・メロディ」(亡くなる約2カ月前の本人映像)は、これは涙なしには見られなかったが、上に書いた、飛行場のシーンにおける情感創出が、良いお膳立てになっていると思うのだ。
#今をときめく?二人の若手、ハンク・スノーの息子をコディ・スミット=マクフィーが、B.B.キングをケルヴィン・ハリソンJr.が演じている。
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