[コメント] ファミリー・ネスト(1977/ハンガリー)
これは普通に面白い映画でした。夫の家族と同居する、食品工場の労働者でもあるイレンという女性を主人公にし、夫の父親(舅)との確執や、夫との関係の変化を、よくあるドキュメンタリータッチで描いた作品だ。
よくある、と書いたのは、複数の人物の会話シーンなんかでも、切り返しよりは、パンとゆったりとしたズームで見せるスタイルを指している。これは、今現在の映画でも(洋の東西を問わず)よくある画面だと思うが、本作は、キャラクター造型のアイロニカルな部分が周到で、ずっと興味が引っ張られ、面白く見ることができた。
例えば、唐突に、イレンの友人の女性を乱暴し始める男二人が繋がれるのには唖然としてしまう。こゝは、ずっとアップショットで見せるという演出で悲痛な感情が増幅する。しかし、続くパブのシーンでは、三人そろって平然としているのだ。あるいは、義父(舅)のキャラクターが実に面白い。いつも嫌味ばかり云い、イレンの素行について執拗に責める様子も憎たらしくていいが、終盤になって、彼の醜悪な素行を見せるプロット展開が上手い。また、遊園地のシーンなどで流れる青春映画のような能天気な歌も、皮肉なジョークのように感じられる。これらの演出は、20代前半でよく造型したものだ、と舌を巻くものだが、ちょっとワザとらしくも思う。
そして、ラスト近くの、イレン及び彼女の夫の独白を繋ぐ部分は、質問者を映さずに、それぞれのアップショットの繋ぎで押してくる演出で、二人とも殊勝な科白と涙を見せるのだが、これをハッピーエンディングと取るか、バッドエンディングと取るかは、見る者の価値観というか心性によるだろう。複雑なエンディングで、この帰結も周到だと思う。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。