[コメント] 愛してる!(2022/日)
SMに目覚め世の中に向け魂を解放した(つもりの)ミサ(川瀬知佐子)が「愛してる!」と叫ぶとき、その対象は極めて私的で限定的に閉じられているという矛盾が露呈する。愛とは解放ではなく収斂と執着だという"性のどうしようもなさ”が垣間見えるところが面白い。
クールで冷徹なSMの女王様カノン(鳥之海凪紗※若いころの原田知世そっくり)とミサ(川瀬知佐子)との関係が、絶対的な教祖を妄信する信者のように見えてくる。確かに「魂の解放と、愛」についてSMと宗教は、閉じた心を絶対主にさらけ出すことによって俗世(社会)への執着から解放された気になるが、実は俗世(社会)を排除して絶対主に固着しているという点において近似なのかもしれない。
この、人としての性をめぐる"どうしよもなさ”を描くことこそが「昭和のロマンポルノ」の肝だった。その点において本作は50周年記念プロジェクト作として令和のロマンポルノに値する佳作だった。ただし採用されたフェイク・ドキュメンタリー形式の演出は作品の出来不出来に機能的には関与していなかった。
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