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[コメント] コンパートメントNo.6(2021/フィンランド=露=独=エストニア)

モスクワの大学に通い同性の教授と愛し合うフィンランドの留学生(セイディ・ハーラ)。ウォッカを煽りながら傍若無人に境界を越えて無神経にふるまうロシア人労働者(ユーリー・ボリソフ)。大国ロシアに翻弄されてきたフィンランドの歴史が二人に重なる。
ぽんしゅう

思い込みは思い違いを増幅し、偏見や嫌悪を生み出し"過去へのこだわり"となって澱のように堆積する。留学生ラウラが手放せないビデオカメラとは過去へのこだわりの象徴だったのだろう。ムルマンスクに古代の岩面彫刻を見に行くラウラに、そんな古いものを見て何になるのだと労働者のリョーハは言っていた。

ムルマンスクという地名は初めて知った。モスクワから北へ2000キロ。北極圏最大の都市で暖流の影響で1年を通して凍結しない不凍港としてロシアの海運の要であり海軍の基地もあるそうだ。氷に閉ざされた北極海に面したロシアには港が少ない。クリミア半島にこだわるのは南方面への海軍基地を確保するためだ。

もうひとつ、どっちすかずとの批判を承知で、ロシアと西側諸国との間で中立政策をとってきたフィンランドが、2022年のロシアのウクライナ侵攻を機にNATO(北太平条約機構)への加盟を表明したのは記憶に新しい。

だからこそ、この雪と氷に閉ざされたような北国の"氷解"を主題に据えた物語は、さらに尊さを増したと思います。

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このコメントを気に入った人達 (1 人)jollyjoker[*]

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