[コメント] 崖上のスパイ(2021/中国)
目的は明示される。手段がほぼ全編にわたり不明である。この前衛的な構成によって劇中人物たちは手持ち無沙汰に陥り、マンガのような洋館で食って寝るだけの喜劇をやり始める。リウ・ハオツンも場違いの感が甚だしい。
作者の性癖を煮詰めたようなそのアニメ声が発せられるたびに、事態の重さを計量できなくなる。事件をどのようなカテゴリ・抽象度で捕捉するのか作り手に明確な指針がないために、スリラーから段取りは欠落し、本筋には子ども探しの私情が混入し、アクションの時代考証は無茶苦茶になり、そのカットつなぎまでも飛び気味になる。科長(ニー・ターホン)の巨顔だけが作者の性欲の渦の防波堤となり、モグラ狩りという作中唯一のスリラーを育む。しかしそれでは特務内のいざこざでほぼ完結する話になり、共産側がますます添え物にすぎなくなる。
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