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[コメント] TANG タング(2022/日)

舞台は北海道に始まり、福岡〜深セン〜宮古島〜北海道と推移するが、実はトレイラーなどの印象で、もっと世界をまたにかけたお話かと想像していた。
ゑぎ

 まずはとにかく、主人公−二宮和也の、移動を余儀なくされる状況設定やモチベーションの弱さ緩さが「はいはい、こういう体(てい)で見てね、ということだよね」と思いながら見ざるを得ないもので、観客に甘えている日本映画の典型だろう。しかし、だからと云って面白くないか、と云うと、緩さを許容しながら見たならば、まあまあ楽しんで見ることができる出来ではある。

 まず、良い部分をあげよう。二宮とタングの出会いが家の裏庭ということなのだが、これが予想以上に広い敷地であり、隣が牧場で馬が放牧されている、という設定は好き。良い画面を導く。続いて、妻−満島ひかりから追い出された二宮が、タングを修理するために旅をすることになるけれど、ずっと赤いジャンパーを着ている。これもいい。私はジェームズ・ディーンを想起した。ついでに云うと、二宮のコーヒー好きという嗜好について、後半も何か機能させることができれば良かったと思う。あと、登場人物では、福岡のアトビット社で出て来るナルシストの京本大我のキャラは良いと思った。また、それ以上に、深センの場面の奈緒がいい。この人、こういうキャラも上手いのだ。タングの略奪及び奪還のアクション場面は奈緒も含めてユル過ぎる描写だけれど、奈緒の早々の退場は、惜しいと思った。京本や奈緒を後半も絡めることができる作劇なら良かったのに、と思う。あと、満島については、キャラクター自体は悪くないが、終盤の彼女の行動(及び心変わり)を描く部分は、編集がイマイチだと思った。

 さて、良い部分をあげようと云いながら、けっこう残念な部分も書いてしまったが、マジで宜しくないと思った部分をあげつらうとキリが無くなってしまうので、できるだけ簡素に記述したいと思う。例えばコンピュータ処理の本邦のクォリティなんて部分はいちいち記載しない(勿論、さらなるブレイクスルーが必要と思うけれど)。やっぱり、アクション演出、あるいは、そのお膳立てとしての人物造型がお座なりな点が私としては真に幻滅してしまう部分だ。人物を上げると、武田鉄矢山内健司濱家隆一小手伸也らにまつわる諸々の造型は、ことごとく甘過ぎると思う。山内と濱家を、もっとシリアスな、映画らしい人物として扱っていたなら、かなり違っていたと思うのだが。

(評価:★3)

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