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[コメント] 劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室(2023/日)

冒頭は空港での旅客機の不時着事故現場シーン。燃料タンクへの引火爆発とのタイムリミットサスペンスだ。目の前の命優先と無謀な勇気の背反、というテーマを上手く印象付けるのだが、同時にERカーの価値(重要さ)も強調された良いオープニングだと思う。
ゑぎ

 全編に亘って、ERカーの中での手術シーンを中心に、医療チームの奮闘の描写は、短いショットのカッティングも奏功して、私とて自然に涙が出てくるぐらい興奮した。しかし、本作のフラッシュバック過多はどうだろう。それもテレビドラマとして放映された映像がほとんどなのだ。これは、テレビドラマを見ていなかった観客向けの説明という側面と、テレビドラマ時点からのファンを喜ばせる対応なのだろうと思われるのだが、それにしても、映画らしさを損なうレベルの画面ではないか。新たに撮られたフラッシュバックシーンとしては、鈴木亮平から仲里依紗へのプロポーズや、学生時代の賀来賢人とが空港レストランで、うどんを食べるシーン、佐藤栞里が話しかける幻想なんかがあるけれど、これらも力の無い画面だ。

 また、序盤の鈴木と仲里依紗の家でのやりとりの広角気味の画角が、気持ち悪く、宜しくないと思った。他にも、放火犯側の描写がいくらなんでも弱すぎる。犯人の背景が薄っぺら過ぎて(というか何も描かれないので)、リアリティが無い、という以上に欠落感が大きい。私は、理由を描いて欲しいと云っているのではない。映画として魅力のある悪役を造型して欲しいということなのだ。なんなら、賀来と杏の過去のいきさつみたいな部分は全部切り捨てて、犯人をもう少し描いた方が良かったと思う。

 全体、ベタベタの展開と見せ方の連続で、私としては、あくまでもテレビドラマの演出という感覚を持った。こんなに気恥ずかしくなるような感動惹起描写を連続させなくても、と感じる。しかし、これが好きだという観客も多いのだろうことも認識はしているが。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ダリア[*]

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