[コメント] 最後まで行く(2014/韓国)
まず、冒頭は、雨上がり。濡れた道路。母の葬儀に車で向かう場面。主人公のコ・ゴンス刑事−イ・ソンギュンは、既に黒いネクタイをしている、ということで、微妙に設定が異なるのだ。さらに大きな相違は、彼は妻と死別しているのか、斎場で待っているのは、妹であり、コ刑事の娘は妹夫婦が面倒を見ている。というワケで、広末涼子の役割が無い、という点だ。これは日本版(藤井版)の改変部分としては大きいところだろう。
勿論、細かい相違はいろいろあって、事件を犬が目撃しているとか、検問の警察官たちに対する主人公の態度だとか、遺体を棺に隠すまでの段取り(匍匐前進し機関銃を撃つ兵士のリモコン人形の使い方)だとか、書きたいことはいっぱいあるが、日本版が修正・追加した大きなポイントとしてあげるべきは、悪役のパク刑事−チョ・ジヌン(日本版の綾野剛)のプロットへの絡ませ方と、あと、本作韓国版には反社会的勢力が描かれていない、つまり、日本版の柄本明のような役割は全く無い、なので帰結も全く違う、という部分だろう。
さて、細かい部分で書きたいことをもう少し書いておこう。2作とも携帯電話の着信音の使い方が良く出来ているのだが、日本版はオクラホマミキサーだったのに対して、本作はショスタコーヴィチのセカンドワルツ。ということで、なんか格調高く、携帯電話の持ち主のキャラからすると違和感がある。多分、本作の作り手はキューブリックのファンなのだろう(このメロディは『アイズ・ワイド・シャット』の冒頭BGM)。また、棺をめぐっては、本邦は火葬で本作は土葬なので、墓の掘り起こしモチーフが出て来るのはこちらの良いところだと思う。その他、自動車の爆発と横転から池に吹っ飛ぶショットは、日本版よりも本作の造型の方に軍配を上げる。あと、主人公とパク刑事との最終決着をつける闘いに関しては、本作はマンションの部屋で主に肉弾戦で行われる。これには、生身の闘いとしての強度が上がる面と、アクションに広がりが欠ける面の両方があるだろう。
全体として、私としては、日本版のパワーアップしている部分により瞠目させられた、というのが素直な感想だ。実に巧妙に改変していると感じられたのだ。見る順番や好みの問題もあるだろうし、中国、フランス、フィリピン版のリメイク作もあるそうで、日本版はそれらの「いいとこ取り」をしている可能性もあるとは思う。
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