[コメント] ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地(1975/ベルギー)
70年代の作品にして、非常に新鮮。固定ショット、長回し、劇伴なし、長尺。これらによりジャンヌを盗み見ているかのような感覚にどっぷりととらわれる。
さらに、セリフが相当少ないことで、ジャンヌの行動や表情から彼女の内面に自然と思いを巡らすことになる。
それらが奏功し、本来他人からすればジャンヌの日常の綻びなど些細なことではあるが、彼女のラストの行動に対して、そういうこともあるのかもと無理なく思わせてくれる。
長尺ではあるが、飽きさせないのは端々のディテイルにも面白みがあるからだろう。
例えば、客を迎えるときにベッドの上に敷くタオルが妙に薄っぺらく、糸が飛び出たりしているのが印象的。タオルは使用後にすぐ洗うなどキレイ好きだし、ピシッと皺も寄らないように配慮してベッドに置いてはいるが、タオルの質へのこだわりは低い。
また、客が来る際もベッドルームには亡き夫とのであろう写真が飾ってあったり、客から受け取るお金をしまう陶器がダイニングテーブルのすぐそばにあったり、息子にお金を渡すときもそこから躊躇なくとっていたり、独特のあっけらかさんも伺える。
ラストも、外のネオンの灯りだかがチラチラしている暗いダイニングテーブルで、6分間ほども無言で座っているジャンヌを捉え続ける。シャンタル・アケルマンの監督作を観たのはこれが初めてだが、よくぞこの撮影方法で、この尺で、この内容の作品を撮ろうと考えたものだ。新鮮だった。
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