[コメント] ソフト/クワイエット(2022/米)
こういう手合いを人非人の愚か者に描くのは結構だけど、それだけでは自業自得、呪われろという感慨以外生み出しようがない。愚か者を誑かして世に憚る賢い奴もいるわけで、そういう本当に危険な奴を描くべきだと思うのだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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そういう意味で前半のソフトアンドクワイエットな主人公の立ち回りがいい意味で非常に気持ち悪くてよい。長回しで「臨場」させる集会も実に気色悪くてよい(この技法が活きているのはここくらいに思えるが)。しかしコイツもただのバカであることが分かるにつれ、戦慄もむしろ冷めていく。後半はバカ博覧会に慄くばかり。
ただ、政治的悪意は悪意として伝播するのではなく信念として伝播するから強固な結束を呼んで恐ろしいという前半の観察は正しいので、これは肝に銘じておくべきだ。集団的アイデンティティを自己規定する集団が振るう暴力はいつもそうだ。井戸端会議を発端に人は死ぬということを解説する嫌な戯画。言うまでもなく今や井戸端会議は世界規模で行うことができるのであるから、その恐ろしさは推して知るべしである。
興味深いのは、バカなのはオバハンばかりでオッサンは嘆息して去るばかりという筋。監督は女性らしいのだが、この点どう捉えるべきなのだろう。
終盤、ガイコツのような主人公のオバハンは天を仰いで瞑目するが、コイツをはじめ、なんでこんなことになったかということを考えた時に、自らの思想との内省的連絡はなさそうだ。要するにツイてないとしか思ってなさそうということ。この点、やはりバカが一番怖いということでもあるのだろうか。
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