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[コメント] ゴールデン・エイティーズ(1986/ベルギー=仏=スイス)

カフェの店員シルヴィー−ミリアム・ボワイエを中心とする歌唱シーンから始まる。これはシャンタル・アケルマンによるミュージカルなのだ。
ゑぎ

 ラストシーン以外の全ての舞台は、パリのどこかの地下モール。ブティック、美容室、映画館、オープンスペースのカフェを背景とする。ブティックの経営者はシュワルツ氏でシャルル・デネが演じていて、妻のジャンヌ−デルフィーヌ・セイリグと息子のロベルトが手伝っている。美容室の女性店員は10人ぐらいいるようだが、2人を除いて、皆ニットのノースリーブのセーターを着ている。セーターの色はピンク、黄色、グレー系。胸が目立つ衣装だ。除いた2人はマドとパスカル。2人ともセイリグとデネの息子のロベルトが好き。そして、美容室の雇われマダムのリリ−ファニー・コタンソンは真っ赤なドレスを着ている。リリは経営者のジャン−ジャン=フランソワ・バルメの愛人だが、彼女もロベルトが好き。ブティックも含めて、地下モールのオーナーはジャンということだと思う。他にも、序盤からラストまで、アメリカ人旅行者のイーライ−ジョン・ベリーがずっと絡む。イーライは、パリ進駐時代にジャンヌ−セイリグと恋人だった男だ。これらが主要登場人物。けっこうな群像劇なのだ。

 多分もっとも登場時間が長いのは、矢張りジャンヌ−セイリグで、次に美容室のマドとリリだろうか(体感的には)。重要な役柄という意味では、ジャンヌとマドが主役と云うべきだと思う(マドはリオという女優が演じている)。プロットの主軸は、マドのロベルトへの想いとリリとの三角関係を含めた恋の行方と云えるし、それと同時に、ジャンヌとイーライとの恋の再燃の葛藤が並行する。あるいは、息子ロベルトの恋の行方という意味では、陰でコントロールするのは最終的に母親のジャンヌであり、やっぱりセイリグの役割が大きいと考える。

 ミュージカルシーンでは、美容室の店員たちと共に、カフェにたむろしている若者の男子5人(?)が狂言回しのように登場し、小さな歌唱シーンが挿入されリズムを形成する。ミュージカルシーンは前半多いが、後半は少ない。セイリグは後半に一曲だけ唄う。しかし、こゝはその複雑な表情に感激する。全編でも最も良い場面だと私は思った。いや、こゝだけでなく、セイリグが、彼女のほとんどのシーンで、微笑みを浮かべている。これが素晴らしいのだ。

 また、上で登場人物の衣装の色について、いくつか触れたが、本作は本当に美しいカラーミュージカルと云うべきだろう。ミュージカルシーン自体のクオリティでは比較にならないが、画面の美しさという意味では『パジャマ・ゲーム』に匹敵するぐらいだ、と云ってもいいのではないかと思う。美容室の店員ら全員、いや出て来る女優が全員チャーミング、という点においても素晴らしい。アケルマンがこんな商業映画も撮っている、という点での驚きも大きい。

#映画館の外壁に『拳銃魔』の大きなポスターが貼ってある。

(評価:★4)

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