[コメント] アステロイド・シティ(2023/米)
スタンダードサイズのパートでも、ラスト近く「目覚めたければ眠れ」の連呼シーンで一部カラー有り。アステロイドシティを舞台とする演劇というか、劇化部分はシネスコでカラーだ。いずれにおいても(現実シーンも劇化部分も)人物を縦に並べてディープフォーカスで撮った画面が目立つ。いや、アステロイドシティでは、手前の人物から奥の峡谷の書き割りまでピントが合っている画面も多い。人工的な被写体を隅から隅まで写し取りたい、という欲望がよく現れている。
ジェイソン・シュワルツマンと長男のウッドロー君−ジェイク・ライアンが主人公と云っていいだろう。妹たち−3人の小さな女の子−アンドロメダ、カシオペア、パンドラが可愛い。常套だが、彼女らの悪態がいい。
集められた超優秀な少年少女はウッドロー君を含めて5人おり、彼らが暇つぶし(?)にするゲーム−実在する人物の名前を付け足しながら挙げて行く記憶ゲームがペダンティック過ぎるのだが、ウッドローが北条時行の名前を挙げるのには驚かされた。
この5人の中の一人ダイナの母親がスカーレット・ヨハンソンで、シュワルツマンのカウンターパートになる位置づけだが、やはり、彼女の存在感は別格だろう。目のあざのメイクがいい効果を出す。彼女とシュワルツマンとの、モーテルの向かい合った窓越しの会話場面もみんないい。一瞬の裸体と代役への言及は皮肉っぽい。
期待し過ぎていて物足りなく感じたのは、オドオドしたの宇宙人の描写。全般にこのセレモニー会場のシーンは奥行きもなく、画面的にはイマイチに思った。あと、学校の先生−マヤ・ホークと、カウボーイスタイルのバンドの一人モンタナ−ルパート・フレンドとの続きが見たかった。子供が作った歌の合唱とダンス場面がいいだけに、その後の2人が気になる。
概ね、モノクロの現実パートがテンションを下げるキライがあるが、演出家役のエイドリアン・ブロディとその妻−ホン・チャウの別れ話がよく出来た掌編小説のよう。そして、シュワルツマンとマーゴット・ロビーとの会話シーンは、ずっと横から二人をロングショットでおさめているのだが、唐突に正面バストショットで切り返すタイミングが絶妙だ。雪が降ってくる演出にもうっとりする。ホストのブライアン・クランストンは、少々鬱陶しいが。
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