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[コメント] 福田村事件(2023/日)

あまりに、あまりに生々しい迫真の映画だ。役者らの熱演もあるが、それ以上に演出の力を感じた。それは森達也監督の力量なのだろう。まさに敬服に値する。
シーチキン

がんばってロケもしているが、100年前の雰囲気を出すには限界がある。どこかに今の時代の痕跡が残ってしまう。わだちとか、かすかに見えるアスファルトの道路とか、流れ橋のワイヤーとかピカピカの針金などにもそれが見て取れる。

(後日、ふと思ったのだが、それらはあえて、そのままにしていたのかもしれない。現代の風景ですよと見せることで、この映画は過去のことを描いているのではないのかも、と思わせる効果を狙ったのかもしれない。ちょっと考えすぎとは思うが)

予算の制約もあっただろう。しかしそれらを気にならなくするだけのリアルさというか、これは現実に起きたことなのだという強烈な意思が伝わってくる。

描かれている事件は、暴発的、偶発的なものだったのかも知れない。しかし、小さなことが積み重ねられることによって、そこにいたる道がつくられていったのではないか。その思いが監督の力ある演出を生み出したように思えた。

あと劇中、井浦新が語る朝鮮時代に、彼がひどい精神的ダメージを受けたという、教会に29人の朝鮮人を閉じ込めて軍部が虐殺した事件というのは「提岩里教会事件」のことだと思う。興味のある方はどうぞ、調べてみてください。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)おーい粗茶[*]

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