[コメント] アジアの天使(2021/日)
主題的には、移動、教育、成長、変貌、あるいはポジティブ志向と宙ぶらりん感の共存、そしてコミュニケーションの困難性、といったところか。楽天的過ぎるかも知れないが、石井裕也の仕事ぶりには素直に感嘆する。
ローキーの画面では、オダギリジョーの事務所兼居所の部屋。この部屋の不穏な雰囲気がいい。あるいは、ソル(姉)−チェ・ヒソが、咳き込むポム(妹)−キム・イェウンの背中をさすりながら会話する、ホテルの部屋のシーンも暗い画面だ。あと、トラックの荷台のシーンもそう。
ソルの登場は、ショッピングセンターの小さなイベント用ステージで唄う場面。館内放送の方が優先される、という酷い扱い。こゝ、もうちょっと引いて欲しいと思いながら見た。せっかくのステージ衣装姿でしょうに。勿体ない。ポムも最初は、ソルと負けず劣らず嫌なやつだなぁと思ったし、対比するように、姉妹の兄が、ちょっと頼りない(甲斐性がない)が、純粋でいいやつに描かれるのも、類型的だと思った。ところが、ラストに向かって、3人とも、とても愛しく感じられてしまうのだ。
ちなみにオダギリは、本当にいつもの感じ。なんかあまりに適役なので、全然イメージじゃない人をあてるべきじゃないか?と思ってしまったが、とは言え、何度もクスリとさせられる。
そしてタイトルのアジアの天使です。私は誰がやっているのか全然知らない状態で見たので、喜びもひとしおでしたが、各映画サイトでも、配役を書かない方がいいんじゃないでしょうか。ちょっと『私をくいとめて』の脳内相談役の登場を思い出してしまいました。さて、一番良いと思ったシーンは、ソルたちの叔母さんの家の庭で、天使の話をする場面。「運命の人なの?」という科白には、まったく息をのんだ。
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