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[コメント] 花腐し(2023/日)

鬱屈した現代はモノクローム、過去はカラーで描かれる。無彩色の雨が降りしきるなか穴倉に身を潜めるようにアパートの一室で、スナックの片隅で二人のアラフォー男の自省を込めた回想が続く。浮かび上がるのは青春の最終章で足掻く三人の若者の「起点」と「終点」。
ぽんしゅう

時代設定は2012年。民主党政権が挫折して自民党が政権に復帰した年だと告げられる。同じような構造をした荒井晴彦脚本作『ダブルベッド』(1983)の壮年期へ向かう男女の背後にも全共闘世代の敗北感が通底していた。

先日観たいまおかしんじ脚本の青春クロニクル映画『まなみ100%』(2023)の起点も2012年だだった。こちらも作中ではっきりと民主党政権が終わった年だとことわりが入る。偶然だろうか。

ようやく日本映画は、今我々が感じている2020年代の行き詰り感と焦燥の起点として、人知の及ばない圧倒的敗北としての2011年の震災から、国民としての未熟さを露呈させた2012年の政治的挫折に、自省を込めて目を向け始めたのではないだろうか。言うまでもなく、この期間は「あの長期政権」とも重なる。

(評価:★3)

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